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◆ BAD ワールドツアー(1987 - 88) ★ ハンドマイクで熱唱するマイケル・ジャクソンのボーカル力に圧倒された ★ [ツアー]

                                                                         ORIGINAL 2012.11.13 Up
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 BAD25周年記念「ウェンブリー」のLIVE 映像を体感しました!本来、商品として発売を想定していたものではなく、マイケル自身の保存映像用として撮られていたという事で、発売前から映像のレベルや音質についていろいろ言われていましたが、個人的には素晴らしい仕上がりのLIVE 映像でした。マスター音源を使用したというだけあって音質がいい。『BAD25周年記念盤』ではLIVE CDもついていますが、それも納得です。

 個人的に一番に挙げる部分が、「ボーカル力」の素晴らしさでした。最初の「スターティン・サムシン」から「マン・イン・ザ・ミラー」まで圧倒的なボーカルパフォーマンスです。「マンミラ」はエンディング曲にして相当なボーカル力を求められる曲。しかしマイケルは最後まで圧倒的なボーカルで歌いきります。普通にこれらの曲を歌いきるだけでも相当の身体的な力を要すると思いますが、さらにあのダンスパフォーマンスも加わるわけです。凄すぎます。
 そして今回、すごい根本的な事に気づきました。あまりこの点に触れてる人はみかけないのですが。それはマイクの形状です。80年代は、ハンドマイク or スタンドマイクです。アーティストにとってこのマイクをうまく使いこなすものLIVEでは重要なポイントです。それこそマイクパフォーマンスってのもあった。そして『BADツアー』もマイケルはハンドマイクで全開のパフォーマンスです。



 しかし、ハンドマイクは、マイケルのような素晴らしいDANCEパフォーマンスをするアーティストにはネックの部分がある。どちらかの手が使えなくなるからです。


 そして90年代に入り、マイクも進化しヘッドセットタイプのワイヤレスの物でも十分な声量を表現する事を可能にした。そして、マイケル・ジャクソンのダンスは、このヘッドセットタイプのおかけで、全体のダンスを十二分に表現する事を可能にした。



 しかし、その一方、ダンスパフォーマンスが全力できる分、身体的な消耗度もハンドマイクの時よりも増す気がする。走りながら歌ってる感じに近いのでは。
 ヘッドセットで、パーフェクトな踊りとボーカルの調和をみせるのは相当な難題。まだ1曲、いや数曲のパフォーマンスなら可能かもしれないけど、LIVEは2時間近くかかるわけですし。視覚と聴覚のバランスを考えた場合、ボーカルはいわゆる口パクでも、遠目で実際のLIVEを見てる人にとってはそんなにわからないのではと思う。実際にステージのマイケルのビジュアル、そのDANCEの動きに目が行くわけで。
 
 こういう究極の2択があったらファンはどちらを選ぶだろう?ほとんど踊らないけどリアルボーカルのマイケルと、踊りまくるけど口パクのマイケル。多くの人は後者を選ぶのではないかと思う。(ライブの箱の大きさにもよるけど)

 これまで唯一公式LIVE映像として公開されていた『DANGEROUS』ツアーは、半分はヘッドセットでマイケルは歌い、そのダンスパフォーマンスは全開です。

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 今回、『BADツアー』をこうして見て、ハンドマイクのマイケルはなんかすごくおちついて見れた。マイケル自身も、幼少期からステージで育ってきた人。やはりハンドマイクが馴染むのではないかとも思いました。『This Is It』の中でも、イヤーモニターに「適応しようとしてるけどなかなか慣れない。耳の中に拳を入れられているようだ」とディレクターにうったえてるシーンもありました。
 80年代の『ビクトリーツアー』『BADツアー』は、ハンドマイクのマイケル、そしてボーカルとDANCEの比重も6:4位だったのではという気がします。
 そして90年代はヘッドセットタイプになり、ボーカルとDANCEの比重も4:6と逆転したようにも思います。そして5万人以上を収容するスタジアムで行われるマイケル・ジャクソンのパフォーマンス、観客は、まずは踊るマイケルを見たいと思うのは当然かもしれません。そしてその傾向は『ヒストリーツアー』でさらに増した気がします。舞台装置、演出もさらに規模をまし凝ったものにもなった。時代は歌って聞かせるものから、体感的な感じが強くなった気がする。ステージは様々なマイケルワールドを再演する舞台となった。そして『This Is It』はその完璧な調和をねらったものだった。超ビックなスタジアムより、中規模な会場を選んだのも意図したものだと思う。
 
 さて『BADツアー』自体を掘り下げてみたいと思います。『BAD』は『スリラー』超えを本気でねらって製作されたアルバム。ツアーはそのプロモーションももちろん兼ねるわけです。90年代に入って強まる「子供たちへの支援」と「地球の癒し」というメッセージ性はまだこのツアーではみられないように思います。

 アルバム『BAD』は、当初の予定から遅れに遅れ87年の8月に発表されます。アルバム制作に最後まで時間を費やしたため、十分なリハーサルができず『BAD』ワールドツアーが開始されます。そしてその最初の地となったのが日本だったのです。バッドツアーは15か国を回ります。基本、本国USAと西ヨーロッパが中心で、アジアでは日本のみの公演です(次回の、DangerousやHistoryではさらに東ヨーロッパやロシア、南米等も加わっていくわけです)
 123公演行われ、440万人動員しています。

 

 ついに世紀のスーパースターとなったマイケル・ジャクソンが日本を訪れるわけです。日本だけでも23公演です。多くの人がMJのパフォーマンスに酔いしれたんでしょうね。ある意味、日本での人気はこの頃がピークだったのかも。当時の熱狂ぶりはすごかった。この時ライブいってません。どうもおれの人生とマイケルの来日のタイミングがあわない。受験だ、就活とかに当たるんですよね。唯一、自由な時間を謳歌していた学生時代に『Dangerous』ツアーが重なってやっと行ける事になったのですが、「遅刻してしまった」という・・・ありえんわ、まじでっ。
 
  『BAD』ツアーは、1987年から1988年に行われ、前期と後期でセットリストも変更されています。1stレグは十分なリハが出来なかった為『ビクトリーツアー』のスタイルで行われた模様。ステージのバックダンサーが兄弟たちではなく、オーディションで選ばれた凄腕ダンサーたちになるわけです。『BAD』だけあって、ヘビメタ風なタフなビジュアルです。個人的にはそれはあまり好きではないのですが。

 ミュージシャンも素晴らしい。合間に、マイケルを休ませるため「Bad Groove」という、ミュージシャンだけのジャムセッションがありますが、素晴らしい演奏です。
 後にデビューし、グラミーの女性ロック部門の常連にもなるシェリル・クロウもDUOやバック・ボーカルで参加。この頃、セクシー路線だな~。
 
 それでは『BADツアー』1stレグのセットリスト。『ビクトリーツアー』とも比較もしてみます。


1 Wanna Be Startin' Somethin  (from 『スリラー』)
2 Things I Do For You  (from 『Destiny』)
3 Off The Wall (from 『Off The Wall』)
4 Human Nature  (from『スリラー』)
5 Heartbreak Hotel (from『トライアンフ』)
6 She's Out Of My Life  (from『Off The Wall』
 - Jackson 5 Medley -
7 I Want You Back
8 The Love You Save
9 I'll Be There
10 Rock With You  (from 『Off The Wall』)
11 Lovely One (from 『トライアンフ』)
12 Working Day and Night (from『Off The Wall』)
13 Beat It  (from 『スリラー』)
14 Billie Jean (from『スリラー』)
15 Shake Your Body (Down To The Ground) (from 『トライアンフ』)NEW!
16   Thriller  (from『スリラー』) NEW!
17   I  Just Can't Stop Loving You New! (from『BAD』) NEW!
18   BAD New! (from『BAD』) NEW!

 曲はほぼ『ビクトリーツアー』を踏襲。アンコール分も含め最後の3曲が新しく加わります。『ビクトリーツアー』では披露されなかった「スリラー」が加わったことは大きい。ゾンビも登場し、あの伝説のSFのパフォーマンスがステージで展開されるわけだからファンはしびれる。日本のファンにとって「スリラー」のLIVEパフォーマンスがなかったらブーイングだったかも。そして『BAD』からは2曲加わります。
 『BAD』ツアーと冠しても「Smooth Criminal」や「Man In The Mirror」、MVにもなる「Another Part Of Me」という『BAD』の主要曲もまだ加わっていません。
 このライブ映像が、当時、日本テレビで放送されます。こうして今振り返ると、世界的にも異例の事です(私もvideoテープに録りました)。
 さらに当時、マイケル・ジャクソンの人柄を語る話として、来日中におきた幼児誘拐事件の彼の行動があります。当時5歳のヨシアキ君は帰らぬ人となる大変痛ましい事件でした。その結末を知ったマイケルはホテルで号泣したと言います。マイケルはステージ上に通訳を呼び、自身の心からの哀悼の言葉を述べるのです。マイケル・ジャクソンとはそういう人なのです。

 
 88年2月から『BADツアー』の2ndレグがUSAのLAから開始されます。マイケル・ジャクソンのソロツアーとして、母国で初めてのツアーとなるのです。そして最終的には最後のツアーにもなりました。(90年代に入り再びUSA本土でソロツアーが行われる事はありませんでした(ハワイ島はあり)。『DANGEROUS』ツアーは、94年からUSAでのツアーを予定していましたが、あの悪夢の虚偽の告発の影響もあり、鎮痛剤を服用するようになったMJが依存症のようになり、その治療に専念すべくキャンセルされるという事態になります)

  『BAD』からの主要曲も加わり、長年定番だった、ジャクゾンズとしての「Things I Do For You」「Lovely One」、さらに重要曲だった「Shake Your Body」(『This Is It』で復活しますが)も外れます。そして、『オフ・ザ・ウォール』からの「オフ・ザ・ウォール」が外れます。これによりマイケルのソロ色が一気に強まります。

1  Wanna Be Startin' Somethin  (from 『スリラー』)
2  Heartbreak Hotel (from 『トライアンフ』)
3  Another Part Of Me(from 『BAD』) NEW!
4  I Just Can't Stop Loving You New! (from『BAD』)
5  She's Out Of My Life  (from『Off The Wall』
 - Jackson 5 Medley -
6  I Want You Back
7  The Love You Save
8  I'll Be There
9  Rock With You  (from 『Off The Wall』)
10 Human Nature (from 『スリラー』)
11 Smooth Criminal (from 『BAD』)  NEW!!
12 Dirty Diana (from 『BAD』)  NEW!!
13 Thriller  (from『スリラー』)
14 Working Day and Night (from『Off The Wall』)
15 Beat It  (from 『スリラー』)
16 Billie Jean (from『スリラー』)
17 BAD    (from『BAD』)
18 The Way You Make Me Feel (from『BAD』)NEW!!
19 Man In The Mirror (from『BAD』)NEW!!

 こうして振り返ると『BAD』からのNo1シングルがすべて網羅されている。「The Way You Make Me Feel」は今回の7月16日の公演には収録されていませんが、アンコール曲として「マン・イン・ザ・ミラー」とセットでエンディングをかざるようです。
 やはりライブパフォーマンスに向く曲、フィットしない曲ってあると思います。後、全体のパフォーマンスを考えた場合、ボーカル力もRPGの体力ゲージみたく、使っていくと減っていくと思うのですが、「Dirty Diana」などはかなりボーカル力を消耗する曲のようにも思います。『BAD』期から、すごいシャウト唱法なので、喉への負担も相当なものだと思います。Smoothな「Rock With You」もこれまでシャウト的に歌ってなかったのに、「ロック」のとこもシャウトしてますし。かつての唱法は捨て、New Styleを築くべくこの歌い方になったのでしょうか。曲によって使い分けて歌う事は難しいのですかね。
 
 オープニング「スターティン・サムシン」から、ドラマティックな「ハートブレイク・ホテル」そして初登場となる「アナパ」と続く3曲の流れは素晴らしい。一気にマイケルワールドへTripです。

 ヒートダウンして「キャントストップ」「あの娘が消えた」と聞かせるバラード曲。MJのボーカルは美しい。
 定番のジャクソンファイブメドレーの後、「ロック with ユー」。この曲はLive向きだな。会場が一つになる感じ。
「Smooth Criminal」はファン待望の曲だと思う。白ジャケを着、SFの世界が再現されます。今回「Dirty」のLiveパフォーマンスは新鮮だった。
「Working Day and Night」はMJもお気に入りのLiveでも自身でも超のれる曲なんだろうな~。「BAD」は実はあまりLive向きの曲ではないかな。『This Is It』でも外されてるし。
 そしてアンコールで「The Way --」と「マンミラ」。素晴らしい構成です。「ザ・ウェイ」もけっこうLivi向き。Liveではプリンスの「Take Me With You」(『パープルレイン』収録)の感触に似てる印象をもった。

 これこそがまさに『BADツアー』です。当初、マイケルはこのツアーを日本で終えるつもりだったようですが、LAで延期になった振替公演が日本の後で開催されたため、日本での打ち上げにはならなかったようですが、88年の年末にマイケルは進化した『BAD』ツアーを再び日本で見せてくれるのです。
 ビジュアル的にもこの頃が一番いいかも。そしてハンドマイクで熱唱するMJが好き。無意識に歌手とマイクというビジュアルイメージが浸透してるんですかね。
 以前、マイケル・ジャクソンのツアーを採点しましたが、実際に『BAD』ツアーを見る事ができ、お気に入りだった『ビクトリーツアー』も超えたかも(完璧な形の『ビクトリーツアー』の映像がないのもありますが)。こうして真の『BADツアー』のLIVE映像を見れたのは幸福でした。
 当初、マイケル・ジャクソンのワールドツアーはこれで最後といわれましたが、マイケルも撤回し、90年代さらに規模をました世界ツアーにでかけます。Key WORDは、"Heal The World"。マイケルは使命感をもち再び世界ツアーに出るのです。
 
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LUX2021

こんにちは。はずかしながら上映会でBADツアーの比較を見るまで、前期と後期でこんなに違いがあるとはしりませんでした。ほとんど前期しかみていませんでした。後期のマイケルは、可愛いマイケルからキレイなマイケルに変化していることにも気づきませんでした。そしてこのブログ!参考になります。素晴らしい解説ありがとうこさいます!
by LUX2021 (2023-10-02 13:35) 

amber35

このように参考になったという視点を教えてもらうと、こちらも参考になります。 またLUXさんの感じた所を教えて頂くと楽しいです。
by amber35 (2023-10-06 23:53) 

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