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◆ This Is It の 光と闇(前編) マイケルの年代別収入からの分析 [マイケル死後・プロジェクト]

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  2009年3月25日、マイケルは久々にファンの前にその姿をあらわした。そこは母国アメリカではなく英国だった。そして、ロンドンのO2アリーナで10回のコンサートを行うことを発表した。そして「This Is It」という言葉が使われる。

 I just wanna say that these will be my final show performances in London.This will be it. This is it. And when I say this is it, it will really mean this is it.
   
 これがロンドンでのぼくの最後のライブパフォーマンスになる。これで最後です。最後と言ったらほんとうに最後のライブとなります。

『I just wanna say that these will be my final show performances in London.This will be it. This is it. And when I say this is it, it will really mean this is it.』

   私は皆さんが聞きたい曲をやります。いよいよです、ついにこの時がきました。でもほんとうに最後のパフォーマンスです。

 当初、マイケルはこの記者会見も乗る気ではなく、不安にかられていたという。数時間遅れて登場したマイケル、ひとたびファンを前にするとマイケルは輝く。自身の復活ライブの発表を目を輝かせて見るファンを前にして、マイケルはエナジーを注ぎ込まれる面もあったのではと思う。ファンへの愛の言葉とともに「7月に会いましょう」と手を高々と上げマイケルは舞台を後にします。2分足らずの登場だったけど、インパクトは最大級だった。
 
 しかし、この会見の3か月後、6月25日にマイケル・ジャクソンは天にめされます。ほんとうにこの会見がマイケルの最後の会見となった。当時は、悲しみより驚きの方がうわまわった。あれほど意気揚々とライブを宣言していたマイケルが…「うそだろ、ありえない」と。  
 しかし、後にいろいろな情報も出てきて、マイケルの置かれていた状況を客観的かつ冷静に分析すると、けっして驚くことではなかったのです。マイケルの死へのカウントダウンは、その時から、いやそれ以前から確実に始まっていたのです。
 言い方を変えれば、マイケルはこの会見を行う前から、すでにギリギリの状態で生きていた。精神的にも肉体的にも、そして金銭的にも。そして、この「This Is It」公演にそそぐエネルギーとプレッシャーという負荷で、ある意味とどめを刺された(と個人的には思っている)。
 
 あまりこの辺に言及する人は少ないのだけど、このThis Is It 公演は、けっしてPositiveな状況下で進んだプロジェクトではなかったという事だ。我々は表に登場する映像しか見れない。意気揚々とライブを行うと宣言するマイケルにファンは狂喜乱舞した。しかし、その裏で、マイケルは財政面で危機的な状況に陥っていた。
 テレビで、マイケル破産というNEWSを目にすることがあった。これは借入金の銀行への返済のリミットが近づいている事から報じられたものだった。しかし、マイケルは破産することはなかった。なぜならATVという資産をもっていたからだ。
 ATVはビートルズを中心とした音楽版権で、敏腕弁護士・ジョン・ブランカ(ブランカは、マイケル死後、遺産管理人となり、This Is Itも企画)の指南のもと1985年に48億円でマイケルが取得したもの。その後、ATVとソニーのアーティストの版権も合併してさらに強大な版権となり、2011年当時では約1,650億円(マイケルは50%を保有)の資産価値に膨れ上がっていた。こちらを売却して、現金化すれば、マイケルの負債は完済できた。
 しかし、マイケルサイドはそれをしなかった。当然と言えば当然だ。ATVは毎年お金を生み出す打ち出の小づちでもあった。当時で、毎年7億円の利益をあげていた。マイケルサイドは、この打ち出の小づちでもあるATVを担保に銀行からお金をかりていた。銀行も無条件にお金をかすわけがない。貸すだけの価値がATVにあったから貸したわけだ。マイケルは、ATVのような資産はあったが、すぐに
動かせる現金が少なかった。借入の返済の利息に、毎年12億近いお金も払っていた。借金を借金で返すような状態だった。
 ギネス認定されている世界で一番売れているアルバム『スリラー』をはじめ数々のヒット曲とアルバム、ギネス級のツアー収益、そのマイケルが破産ってどういうこと?って多くの人は思うはず。マイケルの財務状況から、このThis Is Itに向かう流れを時系列に見てみる。

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