◆ All I Do Is Think Of You / Jackson 5 ジャクソンファイブ時代の最後のシングル マイケルとジャーメインが歌う切ないLove バラード [楽曲・アルバムレビュー(ジャクソンズ名義)]
この「All I Do Is Think Of You」は、1975年11月にリリースされたジャクソンファイブとしての最後のシングル曲となっています。(75年6月リリースの「Forever Came Today」と両A面シングルになっている模様)チャート的にはR&Bで50位、POPチャートではランクインしていません。モータウンレコードの最後のアルバムとなった『Moving Violation』からのシングル曲です。後にジャクソンファイブのベスト盤等にも収録されています。(私も初聞きはジャクソン5のBest盤でした)
チャート的にはふるいませんでしたが、個人的にはこのバラード「Think Of You」はジャクソンファイブ時代の中で最も好きなバラードです。
1969年、モータウンレコードで「I Want You Back」でデビューしたジャクソンファイブ、リードをとるマイケルは11歳でしたが、天才的なボーカルでした。人によっては、この頃のマイケルのボーカルが一番すごいと評する人もいる。そんな中、モータウンで多くの楽曲を歌いヒット曲を生み出しながら、マイケルも少年から青年へと成長していきます。
この『Moving Violation』期ではマイケルは17歳になっており、苦しんだ声変わりも終え、少年マイケルの歌声ではなく、ジャクソンズ期、ヒット曲をだしまくる80年代のマイケルのボーカルを感じる事ができます。そのマイケルが歌うラブソングなのです。
さらに注目したいのが、ジャクソンファイブのもう一人のボーカリスト・ジャーメインの歌声です。このアルバムは、ジャーメインにとってもジャクソンファイブとしての最後のアルバムとなります。この後、ジャーメインを残して、他の兄弟達はギャランティーのアップと制作権を得るためにEpicレコードへ移籍することになるからです。ジャクソンファイブ時代は、リードボーカルはマイケルとジャーメインが中心になっていました。この時期は2人のボーカルの絡みはたくさん聞けるのですが、マイケルのボーカルはまだ少年のそれなのです。
そういう意味で大人となり成熟した2人のボーカルでの共演は、1984年、ジャクソンズとしての『Victory』期の「トーチャー」。そして同年のジャーメインのソロアルバムでの「Tell Me I'm Not Dreamin'」の2曲しかありません。
『Moving Violation』は、気持ちは新天地に向っているジャクソン兄弟にとっては気合いの入ったアルバムではないかもしれませんが、変声期を終えた青年マイケルとすでにソウルなジャーメインのボーカルが堪能できる貴重なアルバムでもあるのです。そしてこのSweetで切ないバラードで2人のボーカルが絡み合うのです。
個人的にこの曲はジャクソン名義の曲をこえてすごくお気に入りのラブバラードです。胸がキュンとなる恋心を思い出すのです。センティメンタルな秋Songとしてもおすすめしたい楽曲です。リリックも切ない恋心が全開。
来る日も来る日も 学校に行って好きなあの娘がそばを通るのが待ちきれない
チャイムが鳴る そして天使の歌声が聞こえてくる
さあ 運命のあの娘がやって来るよ さあ どうするんだい
ああ 僕は君のことが好きだ この思いを伝えたい
四六時中 君のことを思っている
昼も夜も 君のことばかり考えている
君のことが頭から離れない
ずっと君のことを思っている
こんな切ない思いを切ないメロディーラインにのせて、17歳のマイケルが情感込めて歌います。そして終盤、さらにソウルなジャーメインのボーカルが加わり盛り上げます。特に 君を夢見てる とジャーメインが入ってくる箇所にもしびれます。リリックの中に、School(学校)というワードが出るのもティーン時代の恋心を喚起させる。
この曲のライターは、Michal Love SmithとBrian Hollandのコンビ。2人ともモータウンレコードを中心に活動していた人で、ジャクソンファイブの最後のアルバムとなった『Moving Viokation』でも二人は曲の提供やProducerとしても活躍している。マイケル・スミスは自身でもボーカルをとる人で、「Think Of You」でもボーカルアレンジメントのクレジットがあるので、マイケルやジャーメインの歌い方の指導もしたと思われ、すばらしい仕上がりとなっている。
ジャクソンファイブ時代の代表的バラードとして「I'll Be There」や「Never Can Say Goodbye」などのビックヒット曲がありますが、それに引けをとらない楽曲だと思います。大人のボーカルに近い、マイケルとジャーメインが歌うのがさらに魅力です。ジャクソンズ時代には二人がSlowな曲で共演することはありませんでしたから。
「Think Of You」、チャート的にはヒットはしませんでしたが、後にジャクソンファイブフォロワーやマイケルフォロワーたちによってカバーされ、オリジナルを超えるヒットも生まれています。
まずリル・コーリー(Lil Corey)というソウルな少年がこの曲でマイケルと共演しています。2002年、14歳でのモータウンからのデビューアルバムがこの『I'm Just Corey』です。
I'm Just Corey [Us Import] by Corey (2002-03-19)
- アーティスト: Corey
- 出版社/メーカー: Motown
- メディア: CD
ソウルな歌声です。このアルバムにボーナストラックとしてタイトル曲が「All I Do」が収録されており、さらにフューチャリングとしてマイケル・ジャクソンのクレジットがあるのです。以前からこの曲は、大人の楽曲として大人のマイケルの声で聞きたいなという思いをずっと持っていたので、最初聞いたときめちゃしびれました。
でもよく聞くと、原曲を切り貼りしてるだけという事に気づきます。ナタリーコールが亡き父親のナットキングコールと共演した「アンフォゲッタブル」の手法です。気づいた時、ちょっとがっかりしたのですが、それほどこのボーカルが大人のマイケルの声に近いんだなという再発見もありました。ただクレジットとして Ft Michael Jacksonというのはどうなのよとは思いました。今でもマイケルが参加している曲と勘違いしている人もいるかもしれません。原曲からもってきているのでテンポとサウンドはオリジナルに近いです。(ジャーメインのボーカルもちょっと出てくる)
1989年、Troop(Total Respect Of Other Peopleの略らしい)というR&Bグループが「All I Do Is Think Of You」としてカバーし、見事にR&Bチャートで1位になります。この曲をカバーするなんてすばらしいと思い、当時リアルタイムにアルバム購入しました。
Attitude by Troop (1992-05-13)
- アーティスト: Troop
- 出版社/メーカー: Wea
- メディア: CD
トゥループは1988年にデビュー。デビューアルバム『Troop』はリバート(LeVert)もProduceに加わっている。そして1988年の2ndがこの『Attitude』です。当時としては当然のごとくNew Jack Swing的な曲もあったり、ジャム&ルイスっぽいSlowもあったりしますが、このアルバムに目がいったのは、当時SOUND Createrとして注目していたチャッキ-・ブッカーがProducerとして参加していたからです。チャッキ-Produceの清涼感あるミドル「Spread My Wings」はR&Bで1位を獲得。続く「All I Do Is Think Of You」もチャッキ-が手がけます。この曲のカバーを希望したのが、メンバーなのかチャッキ-なのかは不明ですがナイスなセレクト。原曲とちょっとちがうアレンジで、ピアノのイントロから曲は始まります。チャッキ-はオリジナルとはまたちがったスタイルでProduceし、あらたな魅力を引き出している。トゥループのボーカルワークもすばらしい。この曲も引き続いてのR&Bチャートの1位を獲得します。そしてオリジナルのジャクソンファイブの曲も再注目されることになります。
Troopは3rd『Deepa』では、Babyface、LAリードが所属し、ベビーフェイスが曲を書いた「Sweet November」もカバー。この曲もまたR&Bで首位を獲得しています。
月日は経ち2005年にまたこの曲をカバーしたのがパフィー・コムズ主催のBad BoyからデビューしたB5です。パフィーもかなり気合いを入れてこの5人組を売り出した感じです。
グループ名にFive(5)が入っているのもジャクソン5を意識してるのではと思います。パフィーもマイケル好き、ジャクソンファイブ好きなのでオールドスクールTaste全開のこの曲をこの少年グループに歌わせようとした感じです。こちらのタイトルは「All I Do」になっています。
さらに注目したいのが、プロデュースが、ロドニー”ダークチャイルド”ジャーキンスなのです。この素晴らしい楽曲をロドニーがどう仕上げるかめちゃ注目しました。ダークチャイルドっぽい黒さを感じる仕上がりで踊れる仕様でもありエモい。(ロドニーはもう1曲Produce)
あと、もう1曲、モータウン期のマイケルのソロ曲「I Wanna Be Where You Are」をモロサンプリングしている「Back In Your Arms」も収録。オープニングは、ビートルズの「Let It Be」のアカペラからはじまったり、パフィーのこだわりも感じます。多くのアーティストをブレイクさせてきたパフィーですが、このグループはそこまでのヒットにはなっていません。
この曲は、サンプリングもされておりヒップホップ系ProducerのJ Dillaが「Time:TheDonut Of The Heart」 で。Earl Sweetshirtが「Dat Ass」という楽曲で。ただヒップホップで使うループ系サウンドは個人的にはなじまないな~。
こうしてアーティスト達も大いに触発されている「Think Of You」。ただやはりオリジナルが素晴らしいです。秋になるとよく聞く。そして、この曲を聞いて若い頃に感じていた片思いの切な心も思い出したりする。このリリックとメロディーに切なさを感じれるか感じれないかで自身の感性を計れるかも。
★ ジャクソンファイブの最後ビックヒット曲「Dancing Machine」も収録のアルバム2枚がカップリングされてお得です。
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