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◆ Black Or White マイケル・ジャクソン 『BAD』から約4年、NEWマイケルが完全な形でシーンに戻ってくる そして人種問題に対して感情を爆発させたSFも話題となる [No1ソング]

                          original 2009.11.21 Up
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 『BAD』から4年たった91年、ついにマイケル・ジャクソンの新作が発表されるというアナウンスがされます。3月にはアルバムタイトルが『DANGEROUS』と発表されます。そして例のごとくアルバム発売は延期され続け(予定通りでた事がない)夏までに発売される予定も冬期までずれこみます。最後の最後までマイケルサイドは完璧な形にしようとしたのだと思います。
 まずはアルバムからのリードシングルが何かファンはやきもきするわけです。1stシングルは「Black or White」なわけですが、当時は、まだタイトルはわかりませんでした。メディアやラジオ局は、マイケル・ジャクソンの新曲を流そうと必死でしたが、解禁日までそのマスター音源は厳重に管理されていました。
 「Black or White」の初出は、実は日本のソニーのTV・CM(キララバッソ)だったようです。強烈なインパクトを受けたのを思い出します。はっきり覚えていませんがアルバム発売の1か月ちょっと前から流れていたように思います。


 
 当時、最初の頃は曲のクレジットも画面に出てなくて、右下にただマイケル・ジャクソンというクレジットのみ。そんなの表示しなくても知っとるわ!って感じ。
「この曲のタイトルは何?このめちゃくちゃかっこいい曲は何なの!?」って曲名がないのにイラついたのも覚えています。。CMには、ブリッジのハードエッジな所が使われていて、そしてマイケルがめちゃくちゃかっこよく踊ります。『BAD』の時とはまたちがう雰囲気で、マイケルはさらなる進化をとげシーンにもどってきたという印象でした。当時のMJファンは、このCMで「Black Or White」を初めて耳にしたと思います。


 これまでアルバムの先行シングルは、割と地味な感じの曲をもってきていました。それでも全世界が待ち望んでいるマイケルの新曲ですから、すぐに1位を獲得するのは確実。そして勝負曲を2枚目にもってきてこれまたビックヒットを獲得するのがこれまでの戦略でした。

 しかし、今回は1stシングルから勝負曲をもってきます。それだけ、マイケルも激変しているシーンに対して不安を抱いていたのかもしれません。マイケル・ジャクソンの新曲が、1位を獲得しないなんて事はあってはならないことですから。

 
 91年11月26日、『BAD』から4年4ヵ月。ついに全世界が待ち望んだマイケル・ジャクソンの新作『Dangerous』が発表されます。

Dangerous (2015)

Dangerous (2015)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Epic
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: CD

 『BAD』の後、88年くらいから音楽シーンはある意味、大きな転換期に入ったように思います。それはテクノロジーのさらなる進化です。これにより、音楽プロデューサーの位置づけも大きく変わってきたと思います。
 以前は、クインシー・ジョーンズのようなミュージシャンやコンポーザーを統括する人がプロデューサーと呼ばれていましたが、この技術の進化で、少人数で斬新なサウンドを作ることを可能にします。さらに音のサンプリングも容易になった。もっといえば楽器が扱えない人でもソフトを使えば、パソコンで音楽が作れるようになった。
 そうした中で登場してきたのが、ジャム&ルイスであり、そのスタイルを追うようにLA&BABYFACEが登場。もう一方の大きな流れとして、ビートとスネアに重点をおいたサウンドアプローチをしたTeddy Riley。
 こうしたエナジーは、もう熟練のクインシーから生み出すことは難しかったように思います。マイケル・ジャクソンは常に時代の一歩、二歩先を行かなければならない宿命を背負っていましたから新しい才能と組むことは必然ともいえるでしょう。
 アルバムとサウンドについては次回語りたいと思いますが、今回は先行シングルの「Black Or White」です。この曲はTeddy Riley作ではなくマイケルの作品です。

 
ついに曲が解禁になり、世の中は「Black or white」で溢れかえります。全編聞く事になるのですが、出だしのRock調のメジャーコードで進行する部分を聞いた時、CMで聞いてた転調するエッジの効いたハードな箇所が結びつかなくて、別の曲かと思うのです。さらにMJの曲にはじめてラップもはいります。この展開は斬新でインパクトありました。この転調するとこって、マイケルがダイアナ・ロスと共演した「Eaten Alive」に似ていたりもするんですが。
 ギターリストとして、今回マイケルはガンズ(アンド・ローゼズ)のスラッシュを引き入れ大きな注目が集まります。

 この曲は、3週目にしてビルボードチャート1位を獲得します。当時としては最短でのチャート1位の上昇になります(まぁ後にマイケルは「You Are Not Alone」で初登場1位も獲得するのですが)。そして、その後7週連続1位に居座り続けます。チャート的には「ビリージーン」とならぶメガヒットです。アルバム『Dangerous』も初登場1位を獲得。90年代もマイケル・ジャクソンのDecadeになる事を印象づけます。マイケルは完璧な形でシーンに戻ってくるのです。

 「Black or White」は、『BAD』期にすでに出来ていた曲のようです。が『BAD』への収録は見送られる。最初のバージョンからRapが入っていたかは不明ですが、時代の流れにのり、ついにMJの曲にRapが入ります。ラッピンしてるL.T.B.って誰だろう?と当時思っていましたが、後に共作者のビル・ボットレルその人とわかります。デモ的に入れていた自身のラッピンがそのまま使われるとはボットレル本人も思わなかったというエピソードも後で知る。この曲はRockとHip HopのTasteもMIXされた斬新な曲だと思います。


 
 ショート・フィルムの監督は傑作「スリラー」で組んだジョン・ランディスです。いつもの集団ダンスは控えめで、世界中を舞台にし、人類みな兄弟的な曲のメッセージを届けます。最初の舞台は、マイケル自身のルーツでもあるアフリカ。インディアンと一緒に踊ったりもします。

 
 
 この曲のリリックは興味深い。
 肌の色が白いか黒いかだなんてたいした問題ではない。白人か黒人かなんて関係ない。という所なのですが、驚いたのはそう歌っているマイケル・ジャクソンの本人の風貌です。『BAD』の頃から進行してはいましたが、この作品でのマイケルの肌の色はアフロアフリカンのそれではなく白人のようなのです。
 90年代のマイケル・ジャクソンを語る上で、避けることができないのはこの肌の色の問題です。「尋常性白斑」という皮膚の病気である事をマイケル自身も告白しています。


 
 よくメディアは、マイケルが白人になりたがっていて薬物や整形で肌を白くしたと言ってきましたが、医学的に、手術や整形、薬物でここまで白くできることは不可能のようです。ただ、普通もう少しまだらになるようで、(ファンデーションをしてるかもしれませんが)、マイケルのようにここまで均一に白くなるのは稀のようです。
 しかし、メディアは黒人の誇りを失い、白人になろうとしているマイケル・ジャクソンと評した。私も、当時マイケルの病気の事を知らなかったので、正直なところ、そういう意識を少なからずもっていたのは事実です。
 あと、個人的な好みもあるのですが、『スリラー』の頃の黒人独特のしなやかさとかっこよさにしびれていた私としては、病気であろうと、単純に白人のようなマイケルが馴染まなかったというのもありました。「スリラー」や「ビートイット」、「ビリージーン」を白人のようなマイケルが躍るのは想像できない。黒ヒョウのようなしなやかなマイケルに魅了された。しかし、マイケルの肌の色は変わってしまった。神は、マイケル・ジャクソンにそのような宿命を与えたのでしょうか。
 
 白人になりたかったというなら、マイケル・ジャクソンが、「白だろうと黒だろうと関係ないんだ」という歌をあえて作るのは明らかに矛盾しています。黒人の誇りを失っていないのに、自分の意志に反して見た目が白人になってしまったマイケルが、世に発したメッセージなら理屈が通る。
 
 この曲のSFにはさらに象徴的なメッセージがあります。普通に見ると、世界のいろいろな人たちといろいろな場所で楽しく踊るシーンが印象に残ります。しかし、あの転調するシーンではKKKの白ずくめの人たちやナチスによる戦争シーンを登場させ、炎の中をマイケルが突き破って行きます。終盤のパンサーバージョンとよばれるシーンでは、KKKと書いてある窓ガラスを壊すシーンもあります。(後にその個所は消される) 

 
 
 終盤のソロダンスシーンは、さらに衝撃的です。このソロダンスは、かなりしびれます。このタップダンス以上の脚さばきと手の動きの組み合わせは何?すごすぎます。そしてその後、マイケルは破壊行動にでます。何か抑える事のできない思いを爆発させているようです。この暴力的な所や、股間に手をあて、さらにチャックまであけ、股間をまさぐる箇所が自慰行為を思わせ問題になり、マイケルも謝罪しTV放送ではその後カットされます。

 
 
 しかし、カットされるとそれが見たくなるのが人間の心理というもので、DVD等の映像集では普通に収録されています。


 
 で、終盤、黒豹(ブラックパンサー)がマイケル・ジャクソンになるシーンが意図を感じます。ブラックパンサーとは、70年代に黒人解放運動を推進した過激な集団として有名です。ですからこの黒豹というのは、どうみても黒人を象徴的に表現しているとしか思えません。そのブラックパンサー(マイケル)があえて"KKK rule"と書いてある窓ガラスを壊したりするのです。
 このように、アメリカ合衆国の根深い問題としてあったとしても、黒人と白人の人種の対立をテーマにする空気でもない時に、あえてとりあげたのは、マイケル・ジャクソンの主張というしか考えれないのです。見た目が白くなっても自分のアイデンティティーは黒人であるという過剰なまでの主張をこの「Black Or White」に感じずにいられません。そして、エンディングは「偏見は無知なり」という言葉で締めくくられます。

 
 
 しかし、世の中の多くの人は、特に本国のUSAでは白くなったマイケル・ジャクソンに違和感を覚えたのは事実でしょう。さらに、本人も認めている鼻の部分の整形、連動してか髪型も変っていき、そのビジュアルの変化にも違和感をもった人もいるかもしれません。
 さらにかなり攻撃的な映像で人種問題に迫った。白人至上主義の人からしたら、マイケル・ジャクソンから喧嘩をうられたととらえる人がいたとしてもおかしくない。それが後のマイケル・ジャクソンを貶める陰謀につながったという話もあります。

 こうして「Black Or White」はメガヒットし、マイケルはまたもや完璧な形でシーンにもどってきます。アルバム『Dangerous』は、これまでのマイケル作品とはまったくちがっていました。多くCreaterに声がかかったみたいですが、今作のメインプロデューサーは、テディ・ライリーとなります。兄のジャーメインとアルバム制作に取り組んでいたLA&BABYFACEも割り込んで呼び寄せた事が、ジャーメインの怒りと弟を嘆く歌として「Words Too Badd」という問題作も出ます。結局、LA'FACE作品は収録されていません。めちゃ聞きたいですが。

「Black Or White」のRemixも出ています。当時超人気のC&C Music FactoryのDavid Cole&Robert Civillesがリミックスをしていて、「everybody dance now」のようなエッジ感を期待しましたが、普通のユーロビート調でぜんぜんはまりませんでした。
 
 『Dangerous』は、当時のCDの録音時間いっぱいまで収録されたそうです。このアルバムは、大きくTeddyによるStreetサウンドと『BAD』の流れからくるマイケル作の曲とがあわさった作品のように思います。次回、アルバムについて語りたいと思います。しかし『Dangerous』は、テディ・ライリー抜きには語れない。

Black or white [Single-CD]

Black or white [Single-CD]

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Import
  • メディア: CD

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