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◆ もし『DANGEROUS』の前にBEST盤 マイケル・ジャクソン『DECADE』が発売されていたら [アルバム考察]

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 87年7月に発売された『BAD』、全世界で2年に渡りシングルリリースは続きます。アルバム収録曲の11曲中、9曲がシングルになるというすごさ。(この辺も記録になってないのかな?)マイケルは、平行して『BAD』ワールドツアーも行うわけですが、440万人を動員したこのツアーは89年10月に終え、これにより『BAD』プロジェクトは終幕します。
 エ
ンジニアのブルース・スウェディンによると、『BAD』が完成した翌日からもうマイケルは次のアルバムに向けてのデモテープを制作し始めたというとてつもないエピソードもあります。

 80年代も終わり、新たなDECADEに突入しようとする所で、マイケルの所属するEPIC SONYはマイケルの2枚組BEST盤の企画を行います。タイトルも『DECADE 1979-1989』。この『DECADE』収録曲を分析することで、次のオリジナルアルバム『DANGEROUS』の最初の輪郭も見えてきます。さらにもし予定通りこの『DECADE』が発売されていたらどうなっていたかも推察したいと思います。


 『DECADE 』の収録曲は、「1979-1989」と「1989-1990」の10年で区切ってる2パターンが、ネットや本(Beatlegマガジン Vol127参照)であがっている。ここでは『DECADE 1980-1990』の方の収録曲を紹介してみる。

 〈 DISK1 〉
 1 Don't Stop 'Til You Get Enough 
 2 Rock With You
  
3 Off The Wall
  
4 She's Out Of My Life
 
5 Heartbreak Hotel   (Jacksons名義)
 
6 Someone In The Dark  (初収録)
 
7 Wanna Be Startin Somthin'
 
8 The Girl Is Mine
 
9 Thriller
 10 Beat It
 
11 Billie Jean
 
12 Human Nature
 
13 P.Y.T
 
14 State Of Shock (with ミック・ジャガー Jacksons名義)

 〈 Disk2 〉
   1 BAD
  
2 The Way You Make Me Feel
 
3 Man In The Mirror
  
4 I Just Can't Stop Loving You
  
5 Dirty Diana
  
6 Smooth Criminal
  
7 Come Together(初収録)
  
8 I'll Be There(新録)
  
9 Never Can Say Goodbye(新録)
 
10 Black Or White (新曲)『Dangerious』へ
 
11 Heal The World (新曲)『Dangerous』へ
 
12 Who Is It (新曲)   『Dangerous』へ

 以上が予定されていた収録曲だそうです。
 注目は、やはり新曲である「Black or White」「Heal The World」「Who Is It」。『DANGEROUS』のマイケルワールドの核となる曲でもある。

 個人的には「Black or White」は、この『DECADE』に収録されシングル発売するのは全然ありだったと思う。「Black or White」は、全世界が注目する『DANGEROUS』からの先行シングルとして登場し、瞬く間に1位となりさらに7週Keep、ミリオンセールスとメガヒットを記録しました。
  もし『DECADE』の目玉曲として発売されていたら、この時以上のヒットをしていたかもという思いもあります。「Black or White」は、個人的には90年代っぽい音ではない。かといって80'Sでもない。80年代の香りと90年代の匂いを感じさせ、まさにマイケル・ジャクソンの80年代と90年代をつなぐのに最適な楽曲だと思う。
 オーソドックス感もあるROCK調のメロディーから、エッジの効いたブリッジ、マイケルのシャウト、畳みかけるようにヒップホップ的なラッピンも入ってくるという。これを従来の発表の91年ではなく1年前に発表していたらさらなる強烈なインパクトをシーンに与えたと思います。

 このベスト盤を購入した人たちは、マイケルの80年代の素晴らしい楽曲を感じつつも、「Black or White」を聞くことにより来たる90年代もマイケルの時代が続くことを確信させたのではないかと思うのです。
 結果的には『DANGEROUS』からの最大のヒットシングルは「Black or White」となっていますが、アルバムコンセプト的にも、「Black or White」は『DANGEROUS』からのヒットシングルではなくてもよかったのではと。
 この「Black or White」により、このマイケル・ジャクソンBEST盤『DECADE』は、これまでのファン層だけではなく、さらなるファンも取り込んで、マイケルの次のアルバムの期待度はとてつもないものになるという。
 マイケルTaste全開の「Who Is It」も『Decade』からのシングルとしてカットされたらNo1シングルにもなりえたかもしれません。ベスト盤のおまけ曲としてつけるようなクオリティーの楽曲ではないのは確かです。
 コンセプト的には「Heal The World」は『DECADE』には収録せずに『DABGEROUS』に持って行ったほうがよいと思います。
  
 マイケルの心情的にも、このBest盤でクインシー・ジョーンズとの3部作の栄光を整理し、次のDecadeは、自分が主導しアルバム制作をするという強い思いで迎えれたかもしれない。
 
 ファン的にはどうだろう。私がもしこの収録曲での『DECADE』を手にしていたら、それはそれは最高に喜んでいたはず。まずETの作品「Someone In The Dark」の初収録に喜ぶ。この曲は、その後リマスター版等に普通に収録されることにはなりますが、当時はかなりのレア曲でした。この1曲のみのために購入するファンもいたと思います。
 最終的に『BAD』に収録された「Another Part Of Me」も『BAD』に収録せずに、この『DECADE』に収録されたらさらなる付加価値にもなった。
 さらに『Moonwalker』で披露されたビートルズの「Come Together」。これも95年の『History』に収録されますが、この時収録されていたら相当の目玉曲になりえたと思う。
 そしてジャクソンファイブ時代の名バラード「I'll Be There」と「Never Can Saygoodbye」を大人のマイケルのボーカルでの再録。最高すぎる。そしてこの時のファン層も呼び戻すことができたかもしれない。
  
 これだけの楽曲群でもすばらしいのに、さらに新曲が3曲。
 今となってはすべて聞けている曲ですが、当時としたら相当の喜びだったと思います。『BAD』を購入しなかった層も、「Black or White」のシングルヒットにけん引されて、このベスト盤を購入していたかもしれないし、新たなファンの取り込みもできたかもしれない。
 ベスト盤としての全世界の最高記録セールスはイーグルスの4200万枚のようですが、マイケルのこのベスト盤はそれに迫ったかもしれません。世界セールスだと、最初の1年で1000万枚超えは余裕だったのではと。レコード会社的にもホクホクだったのでは。 

 一方、マイナス的な所を考えてみます。
「Black or White」「Who Is It」「Heal The World」が『DANGEROUS』に収録されていなかったらという所ですが、前述のように「ヒール・ザ・ワールド」は『Dangerous』に収録されるべき楽曲だと思います。「ブラホワ」と「Who Is It」が『Dangerous』に収録されていなくても『Dangerous』のコンセプトは大きく損なわれることはなかったのではと思います。
 「Black or White」がなシングルにらない事により、『Dangerous』からの1stシングルは何にすればよいかというのが重要ですが、私は「Dangerous」を1stシングル曲に推します。『DECADE』もメガヒットした後で、全世界が注目するニューアルバムのアルバムタイトル曲でもある「Dangerous」が1stシングルになっていたら間違いなくNo1シングルになっていたと思われます。
  「Dangerous」は、相当のポテンシャルの曲、マイケルTasteも充満している。最終的にはシングルカットされませんでしたが、シングルカット予定曲ではあった。MTVのステージでも披露されたあのパフォーマンスは絶大な人気。ショートフィルムまたはこのダンスパフォーマンスを披露した後での1stシングルだったら大ヒットしたと思う。
 そして「Remember The Time」「In The Closet」「Jam」というTeddy Rileyとの一連のシングルもよりSmoothなシングルカットとしてメガヒットしたかもという思いもあります。
  ただ「Black Or White」は確かに強力シングルです。どのタイミングでシングルにしていても大ヒットは間違いないと思う。『Dangerous』に収録されていないことで、アルバムの牽引力にどう影響したのだろうか。シングル「Dangerous」では厳しかったかはわかりません。もしかしたらまた新たな楽曲もできあがったかもしれない。
 あと、『DECADE』の新曲の収録候補曲として他にも出ていたのが「Gone Too Soon」(『Dangerous』収録)、「Little Suisie」(『History』収録)、「Men In Black」(未
聴、流出なし)。

 あと、『DECADE』がヒットしすぎぎてニューアルバムの投入タイミングが難しくなるとかあったか!?いや『DECADE』によりさらにマイケルのニューアルバムへの期待が高まったのではと思うのだけど。だからマイナス要素は、そこまでないと思うのです。

 現実的には『DECADE』は流れます。レコード会社的には出したかったけど、ベスト盤のようなものを基本的には好まないマイケルは、未来に目を向けた最先端のサウンドと感性を詰め込んだアルバムの方を作りたいという欲求の方が高かった。何よりもベスト盤におまけでつけるような楽曲群ではないという思いも強かったのかもしれない。
 『HISTORY』も同じような流れで、今度こそベスト盤を出したいレコード会社と、マイケルの思いの
妥協案として2枚組アルバムという形になったように思う。私のような従来のファンとしては、既出のDisk1のベスト盤はほぼスルーで、新録のDisk2にほぼ注目するわけですが。実際、今でも『History』のDisk1を聞くことってほぼない。

 個人的には『DECADE』を発売した世界を見たかった。『BAD』でも十二分にマイケルは世界を魅了しさらなるスーパースターへ登りつめた
。がこの後、『DECADE』を発売していたら、さらなる高みに上がっていたかもとも思ってしまう。
 そういう観点で見ると、マイケルは『DECADE』に新曲を収録せず『Dangerous』に集約させた。ある意味、それにより『Dangerous』はR&Bとヒップホップのビートとスネアが炸裂する楽曲群と、「Black or White」、そしてマイケルの世界観をちりばめた楽曲群とこれまで以上に様々なジャンルと要素が詰め込まれたとてつもないアルバムになったと思います。

Dangerous (2015)

Dangerous (2015)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Epic
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: CD
NUMBER ONES

NUMBER ONES

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2003/11/19
  • メディア: CD

コメント(2) 
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コメント 2

Maiko

DECADEが発売されていたらどうなっていたんだろうって私もイマジネーションを膨らませました。当時のリアルタイムの感覚も知ることができました。ありがとうございます。
by Maiko (2019-12-21 17:56) 

amber35

マイケルの作品の流れの中でも、アルバムの曲のセレクト、シングル曲のセレクト、プロデューサーの起用、いろいろな選択肢があったと思います。そして考えに考え時には悩みまくって世に出されたのが現在の作品群だと思っています。

なので『DECADE』が流れたのも、それが答えだったのだと思います。  感想ありがとうございます。
by amber35 (2020-01-03 22:56) 

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