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◆マイケル・ジャクソン DANGEROUS完成までの道のり - 後編 - Teddy Rileyが加わり『デンジャラス』は危険なアルバムになった [アルバム考察]

                       original 2010.3.14 修正、追記
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 テディー・ライリーが『Dangerous』プロジェクトに加わり、アルバムのカラーが大きく変わっていきます。テディーの参加なしでは『Dangerous』は危険なアルバムにならなかった。
 すでに前回とりあげたように、『BAD』完成後、マイケルはすぐにビル・ボットレルを中心に次のNEWアルバムに向けての楽曲を次々と作り上げていった。その数は70曲以上にも及んだと言います。しかし、何か決定的なものが足りない。それが、斬新なリズムと強烈なビートだったと思います。そしてそれを生み出す才能として目を付けたのが、R&B / Hip Hopプロデューサーのテディ・ライリーだったのです。

 実は、テディーの前に、このR&B的なビート曲を担うことを期待されていたのが、ブライアン・ローレンだったようです。彼はこの時期に下記の曲をマイケルと制作したようです。(ジョゼフ・ボーゲル著『Man In the Music』参照)

 Mind Is The Magic (イリュージョニストのジークフリード&ロイに提供)
 WorK That Body(公式リリースなし)
   Superfly Sister  (『Blood On The Dance Floor』に収録)
 To Satisfy You (ブライアン・ローレンのソロアルバムに収録)
   Men In Black (未聴)
 
 そしてブライアンのR&Bを感じれるのが92年に発表する彼自身のソロアルバムだと思います。楽器もでき曲も書け、さらにボーカルもとれる。めちゃマルチな才能を感じます。

ミュージック・フロム・ザ・ニュー・ワールド

ミュージック・フロム・ザ・ニュー・ワールド

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: BMGビクター
  • 発売日: 1992/08/21
  • メディア: CD

 「To Satisfy You」は『Dangerous』に収録されてもいいすてきなSlowかと思いますが、されず。ブライアンもマイケルと作り上げた楽曲が1曲も『Dangerous』に採用されなかったのは相当失望だったみたいですが、彼のアルバムにマイケルのボーカル入りで収録することを許可したのはマイケルなりの配慮だったのだと思います。

 最終的に、厳しい言い方をすればブライアンのビートではマイケルは満足できなかった。前述のソロ作を聞いてもわかるように、バランスはいいけど、突き抜けたものはうすいように思います。そしてブライアンに替わってマイケルが期待したのがテディー・ライリーだったという事でしょう。

 そしてテディー・ライリーは、ネバーランドに招かれる事となります。カリスマ、スーパースターであるマイケル・ジャクソンを目の前にして、テディーも臆した感じですが、マイケルはテディーにこう言います。「君は本当に僕をプロデュースするんだ。(遠慮はいらない)批判すべき所は批判し、意見して欲しい。君のすべての才能を僕にぶつけてきてほしい」と。マイケル的にも、けっこう追いつめられ感もあったのではと思います。

 その言葉でテディー・ライリーもマイケルの本気度とプロフェッショナリズムを感じ、この世紀のアーティストと楽曲を作り上げる覚悟ができたのだと思います。売れっ子プロデューサーのテディー・ライリーですが、ほぼ他の依頼はシャットアウトし、1年2ヶ月、ホテルや改装し寝泊まりもできるスタジオで『Dangerous』に取り組む事となります。

ネットやブートで『Dangerous』の初期の音源が流出していました。下記がその楽曲です。

1  Jam    Teddy
2  In The Closet  Teddy
3  Remember The Time Teddy
4  Black Or White  Bottrell
5  Who Is It  Bottrell
6  Give In To Me Bottrell 
7  Keep The Faith  Swedin
8  Gone Too Soon Swedin
9  Dangerous(ボットレルバージョン)Bottrell
10  What About Us ⇒ Earth Songとして『History』へ 
11  Monkey Buisiness  Bottrell  ⇒ Ultimateで発表
12  For All Time ⇒  TOTO勢制作、『Thriller 25』に収録
13  If You Don’t Love Me ⇒ Bottrell 公式リリースなし
14  Serious Effect(with LL.Cool.J)Teddy ⇒ 公式リリースなし

 当初の『Dangerous』の形がこの収録曲だったのかもしれません。初期段階では、Teddy Rileyの楽曲はまだ4曲しかありませんが、「Jam」「In The Closet」「Remember The Time」という『Dangerous』の骨格となる曲が出来ています。
 
マイケルもテディーがこれほどのクオリティーの曲を作り上げるのを目の当たりにし、さらにテディーのSOUNDを欲した感じです。それによりアルバム発表が延びたと思われます。

 そして89年~90年あたりにマイケル自身とビル・ボットレルやブライアン・ローレンが制作したDance系の、正直時代遅れの曲は外されていったと思われます。
 しかし、さらにマイケルはこの形に満足できずに、まだ才能あるプロデューサー、ミュージシャンに声をかけます。言い方は悪いですが、マイケルのとってプロデューサーを二股、三股するのは普通というか当然。ある意味、プロデューサー同士で競い合いをし、その中からBestな楽曲を選び抜く。

 マイケルはさらに
当時、No1といってもいいProducer、LA&BABYFACEにも声をかけます。その時、兄ジャーメインはちょうど彼らのLA’FACEレーベルに移籍し、BABYFACEたちとアルバム制作をしていたようなのですが、弟マイケルが割り込む形で彼らをひっぱりだすのです。そして当然のごとくジャーメインの怒りを買います。

You Said

You Said

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: La Face
  • 発売日: 1991/10/29
  • メディア: CD

 それが「Word To The Badd」というマイケルを非難し、嘆く問題作を生んでしまった。そしてこの曲のセンセーショナルな部分だけが取りざたされ、LA&BABYFACEが全面制作した素晴らしいアルバムの本質が取り上げられず、兄と弟の確執的なとこがクローズアップされてしまった。結局、ジャーメインにとってはマイナスのイメージが先行してしまった。
 
結局、LA&BABYFACEの作品は『Dangerous』には1曲も採用されず。招かれたLAリードとBabyfaceのPrideも傷つけられた感。このジャーメインのアルバム『You Said』の中には『Dangerous』に提供した曲もあるのではとこれまた推測(ばっか)してるおれです。(「I Dream I Dream」なんて憧れの人への思いに溢れてるもん。ジャーメインのこのアルバムもまたとりあげさせてもらいます。)

 『Dangerous』を最初聞いたとき、正直違和感がありました。これまでのマイケルの作品とはちがう。これまでのクインシーとの作品は、Romanticである意味Smooth感がありました。しかし、出だしのJamのビートから、まったくこれまでのマイケルとはちがいました。これまでのマイケルに馴染んでいた人は戸惑ったと思う。R&Bに慣れ親しんでいたおれでさえ、このHip Hop色の強いサウンドがしばらくなじまなかったです。
 多分、前編で紹介していたようなアルバムだったら、いつものマイケルサウンドを感じ安心したと思います。でも、刺激は少なかったはず。Teddyのビートを消化すると、そこには新たなマイケル・ジャクソンに出会うことができました。そして『BAD』はけっこう飽きがはやかったのですが、『Dangerous』は長く聞けた。今でも聞ける。それだけ奥が深いアルバムなんだと思います。
 
 その後も、テディとの曲は次々出来あがります。結局、Teddyはマイケルのために準備した10曲分のGrooveのアイデアを提供しすべて採用されることになります。もうすぐアルバムのプロモーションが始まるという段階でも、まだ2人で曲作りに没頭していて、マネージャーからも「もうこの辺でやめてくれ」といわれる始末。その頃できあがったと思われるのが次の曲。


・Why You Wanna Trip On Me 採用
・She Drives Me Wild     採用
・Can’t Let Her Get Away   採用
・Dangerous ( Teddy Remix)  採用
・Blood On The Dance Floor  97年の『Blood On The Dance Floor』へ、この時点で出来上がっていたんですね。
Someone Put Your Hand Out 「Dangerous」ツアーのスポンサー・ペプシのキャンペーンソング Ultimate収録(当時は激レア)

 この中から4曲がアルバムに追加採用され、「Serious Effect」や「Monkey Buiness」などの初期段階の曲も削られたと思います。シングルにはなっていませんが Why You Trip On MeなんかすごいCreativeな完成度の曲だと思います。DangerousもTeddyのRemixが施されちがったビートになります。
 
 マイケルは、アルバムにメッセージも込めます。
当時からすでに地球に対して危機感を抱いていたマイケル。Next「We Are The World」も意識し作り上げたと思われる『DECADE』用だった「Heal The World」を収録。
 この曲とテーマ的にかぶる「What About Us」(Earth Song)が落とされたと思います。
 替わってスピリチュアルな「Will You Be There」が加わります。
 
 当初から『Dangerous』のシングル予定曲だったと思われる「In The Closet」は、当初はマイケルのみのボーカルから、さらに魅力的なものにするためゲストボーカルにマドンナを招きたい希望があり、実際声をかけますが、「こんな曲嫌」って事であっさり断られます。代わりとしてモナコのステファニー王女が招かれます。なんでこの人になったかよーわかりまへんが、魅惑的なボーカルだと思います。
 
 あと、Do You Know Where Your Children Areという重要曲もあります。マイケル死後の『XSCAPE』に収録されますが、『Dangerous』の収録は見送られます。このエッジの効いたギターは誰のPlayなんだろう?

 こうして最終的な『Dangerous』が完成したのではと思います。最終段階は、マイケルもエンジニアのブルース・スウェーデンも3、4時間の睡眠だったといいます。
 
 当初、『Dangerou』は2枚組みの構想もあったのではないかと思います。2枚組みにできる完成度の高い楽曲がそろいましたから。Disk・
1は、テディ・ライリーを中心にしたビートサウンド。Disk・2は、マイケルが中心となって作った作品。しかし、2枚組みにすると、単価が上がる。そうなるとマイケルの描く1億枚というセールスが難しくなる。そこで、泣く泣くCD1枚に録音できる楽曲をしぼったのではという気もします。そしてCDという媒体が収録する事を可能にした。
 
 本格的なアルバム制作は1年半ですが、着手から含めると3年の年月をかけた。この後、マイケル・ジャクソンの実質的なオリジナルアルバムは2001年発表の『Invincible』。この時はさらに2年以上かかった。この頃は流行のサウンドが目まぐるしく変わっていったから2年も経つと初期の頃の音が古臭くなった感はある。時間をかけたくてかけるのではなく、マイケルが満足できる水準のものに到達しないんでしょうね。

 2001年に『Dangerous』のリマスター盤として当初2枚組の特別盤が予定されていました。それまでの25周年記念盤『Thriller 25』『BAD 25』はリマスターと未発表曲の収録が話題となりました。『Dangerous』も同様にDisk2を未発表曲としていたようです。品番も印字されたものが出来上がっていたようですが、最後の最後でDisk2のボーナストラック曲はなしとなり、リマスターされた1枚のみの特別盤となったようです。その収録曲が以下。最終的に『Dangerous』の最終選考から外れた曲だと思います。さらに言えば、テディー・ライリーがマイケルの期待に応える曲を作る事ができなかったらこれらの曲が収録されていたと言うことか。

 1 Bumper Snippet (kid)
   2 Monkey Business
   3 Work That Body
   4 If You Don't Love Me
   5 Serious Effect (feat.LL Cool J)
   6 Happy Birthday Lisa
   7 She Got It
   8 Black Or Whit (Remix by C&C)
   9 Dangerous (alternate Version)
 10 Who Is It (IHS Remix)
 
 以上は『Dangerous』完成までの道のりです。あくまでもおれの推測なんですが~。1億枚をめざしたこのアルバムですが、最終的には3,000万枚のセールスを記録します。『BAD』を若干上回ります。モンスターアルバムにはちがいないのですが、マイケルはこの結果には満足しなかったのでしょうか。そこはわかりません。
 マイケルがアルバムを完成させた後、聞いてもらうべくすぐにアルバムを送ったのがクインシー・ジョーンズだったようです。マイケルから『Dangerous』の感想を聞かれたクインシーがはなった「このアルバムは傑作だ」の一言でマイケルはどれだけ喜び救われたかと思います。

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