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◆ NOTHIN(that compares 2 U) The Jacksons (89) ‐ ジャーメインがリードをとるLA&BABYFACEの最高傑作 ‐ [楽曲・アルバムレビュー(ジャクソンズ名義)]

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 1989年のJacksonsの『2300 Jackson Street』からの先行シングルがこの「Nothin」です。マイケル・ジャクソンとブラザーで結成されたジャクソンズは、マイケルの原点です。しかし、MJはソロ活動に専念するため84年の『Victory』を最後にジャクソンズから離れます。
 そんなマイケルなし(さらにこの時、四男のマーロンも脱退)の初めて、そして今となっては最初で最期となったジャクソン兄弟のアルバムがこの『2300 Jackson Street』でした。そういう意味でも、これまでのジャクソンズのアルバムとは大きくカラーが違います。

2300ジャクソン・ストリート

2300ジャクソン・ストリート

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2016/08/03
  • メディア: CD
 またこのアルバム紹介時に詳しく語りたいと思いますが、このアルバムは3つのカラーから成り立っている作品だと思います。

 1 前作『Voctory』から復帰した三男ジャーメインのソロ作から流れてきた作品
 2 マイケル抜きの、ジャッキー、ティト、ジャーメイン、ランディーの4人で制作した作品
 3 当時のシーンのTop Producerを起用しての作品

 最近、再評価されているようですが、マイケルがいないからといってこのアルバムは駄作ではありません。この3方面のカラーが満喫できるアルバムなのですから。
 で今回取り上げる曲が、先行シングルの「ナッシン」です。上記の分類では3番目に入る曲です。この作品では、当時のシーンのTop Producer、LA&BABYFACREとTeddy Rileyが招かれています。当時、この2組はR&Bシーンでは引く手あまたのプロデューサー、コンポーザーでした。そんな彼らを、同時に招集できたのもジャクソンズのネームバリューによるとこが大きい。彼らの憧れのグループがジャクソンファイブだったのですから。
 
 
 ジャクソン兄弟はかつてはジャクソン・ファイブと名乗っていました。しかし、彼らが属したモータウンレコードと、ギャラのUpとセルフプロデュース権を求めて衝突しますが、話がまとまらずジャクソン側はモータウンから離れる決断をします。(その時、ジャクソン・ファイブという名称はモータウンに帰属していたため、その後このグループ名を名乗れなくなります)
 移籍したエピックでも、完全にアルバム制作をコントロールできたのは3作目の1978年『Destiny』からでした。外部のProducerに頼るのではなく、自分たちのスタイルで勝負したいという思いがやっと叶うのです。そして、ジャクソンズでのCreativeな活動が、マイケルのソロ作への弾みとなったと思います。
 しかし、今回は11曲中、7曲を外部Producerが手がけます。それがマイケル・オマーティアン、そしてLA&BABYFACE、テディー・ライリーの3組。この内、M・オマーティアンは外部Producerというよりジャーメインのブレイン。ジャーメインのソロ作用の曲がジャクソンズのアルバムに流れた感じ。ですから実質的な外部ProducerはLA&BABYFACEとテディ・ライリーの2組による3曲。この辺は、ジャクソン兄弟の意思なのかレコード会社の意向なのかはわかりません。レコード会社的には、マイケルのぬけたジャクソンズの穴を埋めるべく、保険的に、ヒット曲請負人のLA&BABYFACEの曲を入れたのかもしれません。
 
 兄弟たちも、その時のシーンのTopを走る彼らとのWORKで新たなものを吸収する意図もあったのかもしれません。特にジャーメインは、LA&BABYFACEのプロフェッショナルぶりに相当刺激を受けた様で、後に彼らのレーベルへの移籍することになります。ジャクソン兄弟的にも、マイケルがいないジャクソンズのアルバムは駄目だと思われることを(正直)恐れた面もあるように思います。あらたなジャクソンズの出発曲で大コケするわけにはいかない。確実にヒットを生み出すLA&BABYFACEの力量に頼ったとこもあるのではないでしょうか。

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 でそのLA&BABYFACEです。すでに本編Blogの“Producer”カテゴリーで3回にわたってこのプロデューサーチームをとりあげています。当時はほんとヒット曲請負人的なとこがありました。彼らが大ブレイクしたのが、88年。ボビー・ブラウンの『Don’t Be Cruel』のメガヒット。88年度の年間No1アルバムです。

ドント・ビー・クルエル

ドント・ビー・クルエル

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1988/10/25
  • メディア: CD
 
 さらにR&B的にはキャリン・ホワイトの『Karyn White』が大ブレイク。一躍トッププロデューサーに躍り出ます。とにかく手がける曲がキャッチーでかなりの確立でチャートインする。特にR&Bでのチャートイン率は半端じゃない。
 88年、89年の2年間のLAFACE曲のデータ分析です。
 私が調べたところ、この2年間のLAFACE産のシングルカットが24曲あります。R&Bでのチャートバスターぶりは驚異的です。

 R&B  1位曲           14曲/24曲中    No1ヒット率 5割8分
 R&B  TOP10チャートイン 22曲/24曲中    TOP10in率  9割1分

 シングル曲がR&BではほぼTop10に入ってます。ちなみにこの時Top10入りしなかった楽曲は、ポップシンガー、シーナ・イーストンの「Days Like This」とR&BグループMac Bandの「Stuck」。まーたしかに楽曲のクオリティーはちょっとおちる。そうはいっても両者ともその前のシングル曲は大ヒットしています。(Mac Bandの Roses Are RedはR&B-No1)
 
 POPチャートでもすごいです。この時点ではビルボードNo1ソングはありませんが、24曲中15曲がTop10入り。6割2分の確立です。ビルボードのHot-100で10位以内にランクインすることはたやすいことではありません。88年。89年の2年間で5割以上の確率で15曲の楽曲がTop10ヒットになっているのは驚異的です。長らくヒット曲にめぐまれていなかったPOPフィールドのシーナ・イーストンもLA’FACEに依頼。「Lover In Me」(88)は全米2位のビックヒットになります。

 ヒットするからといって媚びたサウンドではありません。
 LA&BABYFACEサウンドの特徴は、かっこよさとRomanticさの絶妙なブレンド感だと思います。かっこよさとRomanticさが同居する音ってけっこう難しいですよ。Romanticさのカラーを引き出したのがBabyfaceのライターとしての魅力。彼自身がロマンティックの塊のような人ですから。そしてLAリードがかっこよよさを演出した。ドラマーであるLAの切れのあるビートとリズムアレンジははかっこよかった。当時、Babyfaceばかり名前がでていましたが、LA&BABYFACE時代とBABYFACE単独の時のサウンドカラーは明らかに違う。そこはLAリードの存在感。LAリードなくしてラフェイスSOUNDは成立しない。Jam&Lewis Freakの私ですが、この頃は私のNo1プロデューサーがLAFACEになってました。
 LA&BABYFACEはある程度曲をストックし、依頼のあったアーティストにあった楽曲をセレクトしProduceするスタイル。この「Nothin」はもともと誰を想定していた曲かはわかりません。そして彼らの書く曲はほとんどLove Song。「Nothin(compares 2 U)」のリリックです。
 
何も 何も君と比べる事なんてできない
君は恐いくらい素敵だ

 もしかしたらBabyfaceが最高にリスペクトしていたマイケル・ジャクソンに提供するための曲だったのかもしれません。BabyfaceにとってMJは唯一無二の存在。比較する相手なんていない。そんな思いをダブルミーニングにしたのではないかと、この曲から感じてしまうおれです。(実際、『DANGEROUS』製作時に、LA&BABYFACEとレコーディングした曲はマイケル死後に発表された『XSCAPE』に収録されることとなります)
 
 リードボーカルは、ランディーとジャーメインがとります。出だしのランディーのボーカルがこの曲のストリート感とあう。そして艶やかなジャーメインのボーカルに引き継がれる。いい感じです。ジャーメインのソロ曲としても聞ける。でもこの曲でマイケルとジャーメインの共演をみたかったな~。「Torture」以上のエキサイティングな仕上がりとなったのは間違いない。
 LA’FACEサウンドをほぼおさえてきた私ですが、その中でもこの曲はオレ的には最高級の1曲。基本、StreetのDance曲ですが、洗練されたビートとRomanticさが絶妙にブレンドされている。LAのデジタル処理されたドラムもいい。途中2回叩く箇所もアクセントになってていい。終盤の、ブラザーの名前を呼び合い、これまたラフェイス得意の「オッオッオ~」雄叫び、そしてBABYFACEのギターソロでこの曲は最高潮に達する。
 さらにこの曲のMVがかなりかっこいい。曲にあわせてストリートを舞台にしてるのですが、マイケルレベルでは踊れないブラザー4人ですが、いい感じで踊ってます。

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当時、ゲーセンにMVが流れる有料のジュークボックスがあったのですが、100円入れてこの作品をよく見てました。後輩のガンズが好きな奴がいたのですが、ロックフィールドの彼をしてこの曲とこのMVかっこいいって言ってました。おれも「わかるか~、君もこのかっこよさが」ってジュースをおごる展開に(笑)。
 
 LA&BABYFACEもシングル曲には、Remix系を多く出しています。この曲もMixのCDSは探し出したのですがこのアレンジはイマイチ。やはりLA’FACE自身がてがけたExtended REMIX(7:28)の出来が抜群です。Extendedでは、さらにStreet感がでててかっこいい。
 
 ヒット曲請負人、LA&BABYFACEが制作した入魂の1曲ですが、チャート的にはイマイチなんです。R&Bで4位。Hot100では77位どまりなのです。
 当時ほぼリアルタイムにLAFACEの曲を聞いていました。シングルから入った曲もあればアルバムで先に聞いてシングルになった曲もある。

◆ Rock Steady / The Whipers (87)   R&B1位/Hot100-8位
  メロディーとボーカルワークが素晴らしい!ブラコンの殿堂入り曲でしょう  

◆ Girlfriend / ペブルス   (88)  R&B1位/Hot100-2位
   クラシック的なストリングスとR&Bの融合、Creativeでキャッチャー  
   
◆ Don't Be Cruel   / ボビー・ブラウン (88) R&B1位/Hot100-8位
    グラミー最優秀R&Bソングノミネート。この曲もクラシック的なストリングスとHipHopも融合     

◆ Roni / ボビー・ブラウン(88)  R&B2位/Hot100-3位   
   超Sweetなバラード、Rappinバラードの先駆的な曲   

◆ Every Little Step   / ボビー・ブラウン(88)   R&B1位/Hot100-3位  
   いい曲、バランスいいし。この曲でBobbyはグラミーの最優秀R&B歌手を受賞

◆ Love Saw It / BABYFACE&キャリン・ホワイト  R&B1位/Hot100 チャートインなし
     シルキーで超Romantic! 2人のDuoも最高     

◆ The Lover In Me / シーナ・イーストン   R&B5位/Hot100-2位
   LAFACEダンス曲の代表格。シーナにとっても久々のヒット曲   

◇ Nothin  / The Jacksons (89)  R&B4位/Hot100-77位
   LAFACEダンス曲の最高峰!しかし、いまいちなチャートアクション    
 
◆ Ready Or Not / After7 (89)   R&B1位/Hot100-7位
   美しいメロディー 、すばらしく繊細なボーカルワーク         

 たいして勉強もせずに、LAFACEサウンドや当時のブラックミュージックを聞きまくってきた私が最高の仕上がりの1曲と感じたジャクソンズの「Nothin」ですが、シーンではそれほど受け入れられません。上記にざっと書いた私の視点でのLAFACE曲の感想ですが、素晴らしいと感じた曲はほとんどビックヒットになっています。
 しかし、唯一、ジャクソンズのこの曲がスマッシュヒット程度なのです。そこにやはりシーンのマイケルのいないジャクソン兄弟への偏見を感じてしまうのです。ジャクソン兄弟の宿命です。マイケルの大きすぎる光が他の兄弟の光を消してしまっているのです。
 この曲、あうかあわないか抜きにして、他のアーティストが歌っていたら、R&Bで1位。Hot100で少なくともTop10に入っていたのではと思います。曲が悪いのではありません。マイケル抜きのジャクソンズが歌ったのが原因のように思います。偏見としかいいようがありません。

 このアルバムには、もう一人のTop Producer、テディー・ライリーの、ニュー・ジャック・スウィング全開の、そしてボビーの「My Prerogative」の焼き直し的な「She」も収録されていましたが、2ndシングルは以前紹介した「2300 Jackson Street」がカットされます。この家族愛を歌ったバラードは、わざわざStreet Soundが得意なテディーにProduce依頼をしたのもミスマッチ。マイケルとジャネットのファン的には、2人が参加しているのでおさえないといけない曲ですが。大体的に家族愛を歌ったこのバラードを大衆は興味ない感じでヒットせず。
 3曲目にジャーメインのソロ的な、オマーティアンとの「Art Of Madness」もきられますが、大衆はマイケルのいないジャクソンズに見向きしない感じで、ヒットせず。
 そうしてアルバムセールスも伸びないわけで、このアルバムでマイケルのいないジャクソンズは売れないという結論をレコード会社が下し、ジャクソンズとの契約が打ち切られます。
 
 今思うと、シングル戦略を考えるべきだったか。このアルバムを聞いたマイケルは、「いいアルバムだ。これは売れるよ」と太鼓判を押した作品。「Nothin」は間違いなくこのアルバムのハイライト曲だし。ジャーメインのVocalも最高!
 次回、その辺をふまえてアルバムを語りたいと思います。

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