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◆ ロッド・テンパートンとマイケル・ジャクソン ロッドなくしてマイケル・ジャクソンの KING OF POPはなかった [プロデューサー、ミュージシャン]

                                                      ORIGINAL 2016.11.10Up
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 2016年10月6日、ロッド・テンパートンが亡くなった。66歳だった。ライターとして、マイケル・ジャクソンをはじめ多くのアーティストに素晴らしい楽曲を提供した音楽家。
 マイケル・ジャクソンは、『Thriller』を経て『BAD』期以降、特に90年代に入りキングオブポップという名称が定着します。エリザベス・テイラーが89年のBlack Radio Exclusive Awardsでマイケルの事をキング・オブ・ポップ、ロック、and ソウルと評したのがきっかけのようです。
 個人的に、その呼び名はそこまで好きでもない。イメージ的にマイケルはKing Of Entertaiment。ビルボードHOT-100は、ROCK、R&B、POP(90年代以降はHIP HOPもか)というカテゴリーの曲でほぼ構成されていると思う。エリザベス・テイラーが言いたかったのは、それらのカテゴリーの頂点を極めるヒット曲を生んだマイケルをKINGと讃えたのだと思う。
 一般的にポップ(Music)って大衆的な意味合いだから、ジャンルをこえて多くの人に好まれる要素をもっている。いくら前衛的な事や独創的な事をしていても大衆の心を掴まなければ、独りよがりといわれるし評価を得るのも難しい。アーティストの中には、ポップミュージックと評価されることを好まない人もいる。
 しかしマイケル・ジャクソンはKing Of Popと呼ばれた音楽性だからこそ『Thriller』は世界で一番売れているアルバムとなった。そしてマイケル・ジャクソンのポップ化を印象づけた曲は、80年のNo1ヒット曲「Rock With You」(『Off The Wall収録』)と84年の「Thriller」だと思う。 この2曲のライターがロッド・テンパートンなのです。  
 


  マイケル・ジャクソンは、79年の『オフ・ザ・ウォール』でKing Of R&Bとなった。クインシー・ジョーンズと作り上げたこのアルバムは当時の黒人アーティストの最高の売り上げを記録した。そして82年の『スリラー』はさらにジャンルのカテゴリーを壊したアルバムとなった。「Beat It」は白人ロックアーティストよりもロックだった。「ビリージーン」は、R&Bの過去と未来がつまった楽曲で、多くの層にR&Bの素晴らしさを伝えた。そしてロッド・テンパートンによる「スリラー」はダンサンブルで最高にPOPだった。
 シーンの流れを変えた「スリラー」というショートフィルムと冠したミュージックビデオによってマイケル・ジャクソンのPOP感は、Kingといわれるまで高まった。「スリラー」は映像とサウンドが完璧に調和した。そういう意味でも「スリラー」の作者、ロッド・テンパートンの果たした役割は大きい。
 
 ロッド・テンパートンは、もちろんマイケル・ジャクソン経由で知りました。それからクインシー・ジョーンズを追っていくうちに、クインシーのお抱えライターとなった彼の書いた楽曲にも数多く出会うことになります。基本、Romanticで都会的なイメージの曲が多い。
 サウンドがクインシースタイルだからそう感じるのかもしれないけど。その中でも、マイケル・ジャクソンに提供した曲は、さらにキャッチーと華やかさがます。ロッド作品の中でもマイケルが歌う楽曲の素晴らしさは別格な感じがする。ロッド自身、マイケルからインスピレーションを感じて作り上げれるのだと思う。

 そしてさらに注目したいのがマイケルのボーカルです。
 87年の『BAD』以降、マイケルの歌い方は変わります。シャウト唱法とボイスパーカッションの頻度が高まった。ある意味喉が強化された。そのお陰で「Man In The Mirror」のようなゴスペル調の曲も力強い歌声で圧倒した。
 でも『BAD』より前のマイケルのボーカルは、ナチュラルで繊細で素晴らしかった。ある種、両性具有的な魅力があった。ソウルでもあるのだけど、グルーヴィーで高音の繊細さも兼ね備えているという。そんなマイケルのボーカルとロッド・テンパートンの楽曲との相性は抜群だった。その代表格が「Baby Be Mine」(『スリラー』)であり「Rock With You(『オフ・ザ・ウォール』)だった。さらに映画ET関連の「Someone In The Dark」はとてつもなく優しいメロディーとマイケルのボーカルが溶け合う。「Lady In My Life」のDeepなマイケルのボーカルは素晴らしすぎます。

 マイケル・ジャクソンとロッド・テンパートンを引き合わせたのはプロデューサーのクインシー・ジョーンズでした。アルバムを手がける際、クインシーは〝まずは曲ありき”という事を述べています。いい曲に出会うことができれば、それで成功は約束されたようなものだと。ミュージカル映画『ウィズ』での出会いを縁に、マイケル・ジャクソンのソロアルバムを手がけることを決めたクインシーは、ロッド・テンパートンに声をかけます。
 その頃、ロッドは英国のソウルバンド「ヒートウェイブ」のメンバーでキーボーディスト、ライター、アレンジャーとしてグループの中核だった。
 

ALWAYS AND FOREVER ~ LOVE SONGS AND SMOOTH GROOVES

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  • 出版社/メーカー: BBR
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 クインシーがロッドに注目したのは77年のヒット曲「ブギーナイツ」だったそう。ファンキーでありながらRomanticなこの曲はHot100で2位(ミリオンも記録)。最初に目についたのは「ブキーナイツ」だったと思うのですが、さらに次のR&B-2位にもなった「Always and Forever」のバラードで決定打になったのではと感じます。こんなファンキーな曲とスロウの曲も書けるライター、ロッド・テンパートンはクインシーが当時求めていたメロウ&グルーブ路線の方向性と見事に合致したように思う。
 それまで面識もなかったクインシーから突然ロッドのもとに電話が入ったらしく、「マイケルのために曲を書いてくれないか」と頼まれたらしい。ちょうどヒートウェイブのアルバムを製作中だったようで、最初はスケジュールがつかないと断りを入れたそうだが、クインシーに押し切られ1曲だけ作るという約束をさせられ、1曲仕上げて英国からLAに飛びクインシーの凄腕音楽チーム集団 ⇒ キラーQに合流する。しかし、その後、アルバム制作から抜けることができず、結局英国に戻ることなく、さらに2曲を制作する事となったそう。
 こうして完成されたマイケルのエピックでの初ソロアルバム『オフ・ザ・ウォール』にはロッド・テンパートンが書いた3曲が収録されています。

オフ・ザ・ウォール デラックス・エディション(初仕様付期間生産限定盤)(DVD付)

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 それでは1曲1曲を掘り下げたいと思います。

◇ Burn This Disco Out

 ここで考えたいのが、ロッドが当初クインシーから依頼され制作した最初の曲はどれか?そして、LAに着いて実際にマイケルと合流して制作した2曲はどれかという所です。
 No1シングルとなった「Rock With You」とアルバムタイトル「Off The Wall」の2曲と、アルバムのエンディング「Burn This Disco Out」はカラーが違うと思います。
 「Burn This Dico Out」はある意味、ヒートウェーブっぽいファンキーさ。ロッドはまだマイケル・ジャクソンと対面しない段階で書いた最初の曲がこれではないかと。ロッド・テンパートンってバリバリの英国人(白人)なのにこのファンキーさは何??ヒートウェイブはクインシー作品を消化した後に触れたので、このファンキーさには驚いた。アルバムの中でも最もファンキーな1曲だし、マイケルが歌う楽曲の中でも最高にファンキーな1曲だと思う。LIVEでも聞いてみたかった1曲。
 『Off The Wall』は、79年の発表後、何度かリマスターされて音もクリアになっていますが、この曲はクリアなデジタル音源よりアナログ感の方がFitする。以前にも取り上げましたが、『Off The Wall』の最初に出たCD音源とその後のものは微妙に感触が違います。この曲も、最初のオリジナル音源で聞いたほうがファンキー感がます。レコードで聞いたらさらに味わいがます。この微妙な感触の違い感じれますか? 

 ◇ Rock With You

 アルバムからの2枚目のシングルで「今夜はドントストップ」に引き続きNo1シングルとなる。この入りやすさはなんなのでしょう。マイケルがEpicでソロアルバムを制作する際、ジャクソンズ的なアルバムにしたくないという思いを強く持っていたといいます。(ま~個人的にはマイケルが歌うとジャクソンズのアルバムもマイケル的になる感じではあるのだけど)そんな中、この「ロック・ウィズ・ユー」はこれまでになかったマイケルのスタイルで、マイケル自身も「僕が歌い、踊るのに完璧な曲」と振り返っている。
 私はヒートウェイブ時代のロッドの曲を聞き込んでいたわでけはないので深くは言及できないのですが、ロッド自身もマイケルからインスピレーションを受ける部分もあったと思うのです。それがロッド自身も成長させたというかネクストレベルに向かわせた。「Rock With You」もその1曲ではないかと感じます。
 マイケルの自伝を読むと、当初「ロック・ウィズ・ユー」はもっとクールでヒップなアレンジを想定して書かれたみたいですが、クインシーは違うアレンジを試みた感じ。それがブラックコンテンポラリーのメロウさを極めた曲として出来上がる。クインシーもロッドがこのような曲を提供してくれるとは想定外だったのでは、と思ってしまう。この曲の持つメロウさRomanticさはその後のシーンにも影響を及ぼしたと思う。
 80年代中盤のブラックコンテンポラリーの中核、フレディー・ジャクソンのR&B-No1シングル「Rock Me Tonight」も「Rock With You」にも通じるメロウ感が充満。天才コンポーザー、Babyfaceがボビー・ブラウンに提供した「Rock Withca」も「ロック・ウィズ・ユー」の影響下にあるのは想像に難くない。曲がいいからどんなアレンジをしてもRemixをしてもいい感じ。クインシーのアルバムでもBlandyをリードにHeavy Dのラッピンも入れてまたちがったロック・ウィズ・ユーが展開される。

Q’s ジューク・ジョイント

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  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1995/11/17
  • メディア: CD
 
 RemixでもFrankie's Favorite Club Mix(私のはThey Don't Care About UsのCDSに収録されてた)がハウス調のRomanticなSmooth感がすごく好み。アウトテイクでアカペラバージョンもあるけど、これマイケルの声がダイレクトに入ってくるから女の娘なんてトロトロになるんじゃないかな。ロック・ウィズ・ユーは、白人層にも大いに受けた曲となる。

 ◇ Off The Wall

 アルバムタイトルとアルバムからの第4弾シングルにもなった曲。
 ヒートウェイブのロッドの曲ってベースも効いてて魅力的なんだけど、『オフ・ザ。ウォール』ではルイス・ジョンソンがサウンドの影の立役者として最高のベースグルーブを奏でた。そのルイスのベースとロッドの楽曲との相性もばっちり。このベースラインは、テンパートンによるものなのか、ルイスのフィーリングなのか(多分ルイスのグルーブだと思うのだけど)。
 ロッドは、マイケルが短い音がたくさんある強いメロディーをもつ曲を好むとわかった、と述べている。マイケルはハーモニーをすごく好んだそうで、その意向をロッドが取り込んだ楽曲とも言える。マイケル自身が歌うバックコーラスとの掛け合いも絶妙で素晴らしい。「オフ・ザ・ウォール」はロッドの曲とルイスのベースラインとマイケルのボーカルとハーモニーが絶妙に融合した曲だと思う。
 ロッドは曲だけでなく詩も素晴らしい。on the wallなら、壁に掛かっている的な意味合いを感じるけど、off the wallですからね。型破りな、クレイジーなという意味合いになるそうです。日本語訳は「人生、気楽に行けば楽しいもんさ」って感じだけど、「型にはまらず、人生楽しもう」って意味合いなのかな。OnではなくOffにする所がロッドのセンス。
 イントロの不気味な笑い声って、「ハートブレイクホテル」や「スリラー」にも通じるドラマ感も感じるものだけど、リリックとの意味合いは不明なんだけど。 そもそもこの笑い声もマイケルなの!?

 『オフ・ザ・ウォール』におけるNo1シングル「Rock with You」はジャクソンズのマイケルからマイケルを卒業させた決定的な1曲でもあるように思う。このアルバムでもすでにロッドはマイケルのKing Of Pop化に大きく貢献している。

 そして82年発表の『スリラー』です。

スリラー

スリラー

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2018/03/21
  • メディア: CD
 
 このモンスターアルバムでもロッドは3曲提供します。アルバム『スリラー』は9曲収録で、7曲がシングルカットされ全てがHOT-100でTOP10に入るという記録もうみますが、シングルカットされていない残りの2曲がロッドの曲でもあります。ある意味この2曲は大人過ぎる楽曲でもあるからシングル向きではないように思います。
 クインシーはこのアルバムを制作する際、「大人のアルバム」にしたいという思いがあったようです。まさにそのコンセプトの中核をなすのがロッドとの3曲です。
 『スリラー』は今や全世界で1億万枚を超えるセールスを記録するモンスターアルバムです。なぜここまで多くの人に受け入れられたかを考えると、老若男女、ジャンルのカテゴリー、時代をもこえて多くの人を取り込む魅力があるからだと思います。
 84年のスリラーのMusic Videoでマイケルに出会い、私のマイケルの曲での最初のヘビーローテは「スリラー」となります。「Baby Be Mine」と「Lady In My Life」は当時、中学生のおれには響かなかった。しかし、私も少年から大人へとそれなりに成長していくにつれ大人の楽曲の魅力がわかるようになり、成人した頃になると「Lady In My Life」は部屋を間接照明の薄明かりにしてどっぷりつかった。「Baby Be Mine」の心地よいリズムとマイケルのボーカルグルーブが心地よく聞くほどに味が出ていった。カーステでのヘビーローテ曲にもなった。個人的にも『スリラー』のもつ幅の広さと深さを自身の年齢とともに体感するわけです。

◇ Thriller

 『Off The Wall』といい『Thriller』といいロッドの曲がアルバムタイトルになるのはたまたまなのか。「スリラー」はイメージ的にもマイケルにFitする楽曲だと思う。 「スリラー」のタイトルは当初、「スターライト」だった。アウトテイクも流出していて、サビの「スリラー♫スリラーナイト」が「スターライト、スターライト and サン」となってる。
 この曲はRomantic感もあるので「スターライト」というフレーズも決して合わないわけではない。でもロッド自身も、しっくりこなかったそうで、モヤモヤしてたら、ある時「スリラー」の世界観が降りてきたという。
 82年11月にアルバム『スリラー』が発表された際、このアルバムの核はマイケルが曲も書いた「ビートイット」と「ビリージーン」だった。「スリラー」に関しては、あのゾンビDANCEのMusic Videoのプランはまったくなかったというのだから驚き。そして『スリラー』がロングランヒットを続ける中、マイケル自身もこの曲からインスピレーションを受けて、これまでの概念をぶち壊すMusic Video『スリラー』を作り上げるのです。
 グラミー賞等、楽曲的には「ビリージーン」「ビートイット」は高い評価を受けたけど、大衆的には「スリラー」の曲とDanceのインパクトはマイケル・ジャクソンを黒人アーティストの殻から完全に開放した。アルバムからの7枚目の最終シングルで、それでも4位という。「スリラー」は個人的には、レコード・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤーを獲得してもいいような素晴らしい楽曲だと思う。Romanticだけどかっこよさもある。そんな楽曲は意外と少ない。
 サウンド的にも、クインシーが70年代後半から表現していたDisco Grooveの集大成のようなリズムアレンジ。ブルース・スウェデンの録音も冴えわたる。 

 ◇ Baby Be Mine

 クインシー・ジョーンズのサウンドに精通している人、この曲聞いたらクインシー&ロッドの曲ってクレジットも見なくともわかると思う。このホーンセクションはもろクインシー。ロッドの曲の質感もモロ。クインシー・ジョーンズ、フューチャリング・ボーカル、マイケル・ジャクソン的な楽曲。
 このミディアムGrooveで、マイケルのボーカルとロッドの楽曲の相性のいいこと!エモーショナルでグルーヴィーなマイケル・ジャクソンのボーカルが素晴らしい。『スリラー』の中でもマイケルのボーカルの魅力が一番詰まった曲としてこの曲を推したい。
 この感触は、この『Thriller』で終わります。残念ながら『BAD』以降、なくなります。その理由は後述。

◇ Lady In My Life

 このスロウも素晴らしい。マイケル・ジャクソンのボーカリストとしてのすごさを感じる1曲。終盤に向かうにつれ高まるエモショーナルさ、ソウルさ。ウィスパー的なマイケルのバックボーカルがすごく好き。サウンド的にもスロウバラードなんだけど、グルーヴ感もましてくるという。ルイス・ジョンソンのベースも隠し味的な。この辺はクインシー・ジョーンズの腕かと思います。マイケル自身が歌うバックコーラスとの掛け合いが素晴らしすぎます。 こういう大人のマイケルの曲もこれで終わりとなります。

 Got The Hot
 

スリラー 25周年記念リミテッド・エディション(DVD付)

スリラー 25周年記念リミテッド・エディション(DVD付)

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  • 出版社/メーカー: SMJ(SME)(M)
  • 発売日: 2008/02/20
  • メディア: CD
 
 これは『スリラー』の25周年記念版の日本のみのボーナストラックに収録された曲。
 実はこの曲は、このボートラより先に88年のサイーダ・ギャレットのソロアルバムに収録され「Baby's Got It Bad」として登場しています。サイーダはマイケルの『BAD』の先行シングル「I Just Can't Stop Loving You」でマイケルのDUO相手として強烈なインパクトを残し、その後もクインシーのアルバムでもフューチャリングボーカリストとしても大活躍しますが、その彼女の88年のデビューアルバムに収録されます。
 『スリラー』25周年記念盤に収録されたこのボートラを最初に聞いた時、すぐに「Got The Hot」と「Baby's Got It Bad」は結びつかななかったのですが、「なんかこの曲聞いたことあるな」って脳内を駆け巡わせていると、サイーダの曲じゃん!って
 『スリラー』からも外れ『BAD』のコンセプトにも合わず、サイーダのデビューアルバムに収録となった感じです。リリックのみサイーダによって書き換えられた感じ。最後をBADで締めているのはマイケル狙いなのをモロ感じます。ロッドの曲としては疾走感のある曲で、これまたバックコーラスとのかけあいがロッド的。

 ◇ Groove Of Midnight 

キッス・オブ・ライフ

キッス・オブ・ライフ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1999/07/28
  • メディア: CD

 これもサイーダのアルバムに収録されている曲ですが、元はマイケル提供用の曲と思われます。この曲もアウトテイクでマイケルが歌っているものがあります。都会的な洗練されたRomanticな80年代的な1曲で、マイケルが歌ったらすごくフィットしたろうなと思います。『スリラー』の次のアルバム87年の『BAD』では、ロッド・テンパートンの曲は1曲も採用されていません。
 マイケルは、プリンスの『パープルレイン』、ジャネットの『Control』を手がけたジミー・ジャム&テリー・ルイスのミネアポリス勢の影響を間違いなく受けた。そして好青年マイケルを、軟弱マイケル等と揶揄したメディアへの反発からタフなMJをコンセプトに『BAD』を制作した。その流れで、「Grooove Of MIdnight」のようなStreetと相反的なアーバンでRomanticな楽曲は入り得なかった印象ももつ。今でもサイーダの歌うこの曲を聞きながらマイケルが歌うのをイメージする。マイケルが歌っていたらかなりすばらしいものとなったと想像する。最近、The Weeknd(ウィークエンドの「I Feel It Coming」に亡きマイケルのこの頃のフィーリングをもろ感じました)
 『BAD』にロッドの曲は収録されていないけど、「Just Good Friends」(テリー・ブリテンとグラハム・ライル作)はそれまでロッドが担っていた大人のマイケルサウンドのイメージをもつ。「The Way You Make Me Feel」のハーモニー感もロッド的。
  
 最後がこの曲。

◇ Someone In The Dark

 当時の興行収入の最高記録を樹立したスティーブン・スピルバーグの大ヒット映画『ET』。その世界観を音楽で表現して欲しいというスピルバーグからの依頼を受け、クインシーは、曲をロッドに依頼し、そして歌うのはもちろんマイケルでした。
 ロッドも、『ET』を見て曲を書いたのでしょうか。しかし、ETの純粋さとマイケルのピュアさが重なり合い、マイケルをイメージしながら自然と出来上がったのかもしれません。



 出来上がった曲「Someone In The Dark」(邦題:暗がりに隠れている君)は当初、シングル化も予定されていました。マイケルのVocalがとても美しく、そして、とてつもなく優しい。子供の子守唄にもいいのではないかと思う曲。アルバムには、Opening version(4:30)とClosing version(3:04)があり、マイケルの躍動感に満ちあふれたナレーションと素晴らしく融合しています。
 しかし、この曲がシングル化される事はありませんでした。『スリラー』の発売を控えている中で、この曲も収録し、マイケルがナレーションを担当したアルバムを発売したMCA(ユニバーサルのレコード部門)とEpic間で訴訟問題となり、法廷闘争の末、『ET Story Book』は、50万枚が出荷された後、販売停止となります。
 そういう経緯で、このすばらしいSLOWは当時かなりのレア曲でした。しかし後に『スリラー』のリマスターアルバムやULITAMTE COLLECTIONにも収録されます。 
 
アルティメット・コレクション

アルティメット・コレクション

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2004/12/15
  • メディア: CD
 
 マイケルの優しいボーカルとロッドの織り成すメロディーに包み込まれる感じです。こんな優しいボーカルのマイケルは意外と少ない。
 以上、ロッド・テンパートンがマイケルに書いた楽曲の紹介でした。

 ロッド・テンパートンの活躍は80年代のイメージが強い。90年代にも彼のクレジットは見たけど、クインシーProduce作品がチャートを席巻しなくなり、90年代のStreert的なグルーブがシーンの主流となった中では対抗できない部分もあった印象ももつ。
 ロッドの曲は、80年代的という言い方もあるけど、クインシー・ジョーンズのもと彼の楽曲は見事に輝いた。そしてその中でも、マイケル・ジャクソンとの一連の楽曲は最高の輝きを放っている。
 マイケルは自伝の中で、ロッドと自分が多くの共通点をもっていると触れています。
 創作する際に、実体験が全てではなく、聞いたり、読んだりした事でインスピレーションを感じ曲を作っていくところが。マイケルのイマジネーション力はすごいんだろうな。マイケルはイメージする事でしか自由にTripできなかったという面もあります。
 ロッドは、メロディーに言葉を溶け込ませようと心がけたという事も述べているけど、マイケルもこのロッドの手法に影響を受けているのを感じる。
 そしてロッドは、マイケル・ジャクソンというアーティストとマイケルの人間性から多くのインスピレーションを受けてこれらの曲を作り上げたのだと思う。
 Ipodでこれらの曲をPkaylistっで作成して聴いているのですが、ロッドとマイケルの世界観にTripしてしまう。マイケルの数多い楽曲の中でもロッドとの曲はスペシャルな世界観を感じる。
 ロッド・テンパートンさん、すてきな楽曲を聞かせてもらってありがとう。あなたの生み出した楽曲は、多くの音楽愛好家、マイケルファンによって愛され聞き続けられる事でしょう。

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