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◆ Remember The Time(92) マイケル・ジャクソン 『Dangerous』からのロマンあふれるショートフィルム、そしてそこに込められたメッセージ [映像・ショート・フィルム]

                                                              2012.5.12Upに加筆

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 ロマンあふれるショートフィルム、久々のマイケルの群舞作品でもある「Remember The Time」。監督を務めたジョン・シングルトン氏が2019.4.29に逝去されました。脳卒中が原因とのことで51歳という若さです。

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 この作品はアフロアメリカンの誇りを随所に感じます。マイケルならハリウッドで名の売れた著名な監督の起用も可能だったと思いますが、あえて若手の才能ある黒人監督を起用したように思います。
 シングルトン氏を悼み、「Remember The Time」の過去記事を整備して再Upします。映像的にも楽曲的にもいろいろと語る要素が多いこの作品です。 

「Remember The Time」は『Dangerous』(91)からの2ndシングルです。New Jack Swing(ニュー・ジャック・スウィング)の天才createrテディ・ライリーを中心に制作された曲。
 アルバム『デンジャラス』は、テディのビートとスネアが爆発していますが、King Of POPのマイケル・ジャクソンという観点からすると、POPで受け入れられるのは難しそうな曲もあります。そうした中、マイケルのカラーとTeddyの才能が絶妙に融合した曲として、この曲はシングルとして最適だったと思います。後に、『Invincible』のメイン・プロデューサーで、テディを師と仰ぐロドニー・ジャーキンスも自分の理想のスタイルがこの曲にあると述べています。(個人的には『Invincible』からの1stシングル、ロドニー制作の「You Rock My World」に似たTasteを感じます。)
 サウンド的には黒い。しかしキャッチーな曲だと思います。マイケルのボーカルも魅力的。特に後半のシャウト。失恋SONGなわけですが、MJの曲の中でリリック的にも好きな曲です。
 そしてダイアナ・ロス関連の記事でも書きましたが、この曲はダイアナ・ロスに捧げられた曲でもありました。

 サウンド的には、テディー・ライリーのカラーが出たこれまでにないMJのシングル曲です。(もっとTeddyっぽいシングルはJAMだと思いますが)さらにNJSwing色を強めたNEW JACK RADIO MIXもあり、必聴です。

Remember the Time

Remember the Time

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 1992/02/13
  • メディア: CD
 
 「Blood On The Dance Floor」というTeddy プロデュースの曲も97年に発表されていますが、この曲は「Remember The Time」の兄弟曲だと思います。スネア感が一緒ですもん。
 当時、史上最高と言われたソニーとの契約更新がありました。その条項の一つにアルバムノルマがありましたが、陥れられた裁判でマイケルはアルバム制作の時間がとれなかったため、過去のストックしていた極上曲を集めて発表したアルバムが変則的Remixアルバムとなった『Blood On The Dance Floor』と思われます。
 
 マイケルがクインシー・ジョーンズから卒業し、次に指名したのがテディー・ライリーだったわけですが、とりわけテディーが制作したGUYの「Spend The Night」にマイケルは魅了されたといいます。

Guy [2 CD Special Edition] by Guy (2007-05-03)

Guy [2 CD Special Edition] by Guy (2007-05-03)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Geffen
  • メディア: CD
 
 GUYは87年にデビューしたテディー率いる3人組グループ。アーロン・ホールのDeepでソウルなVocalも魅力で、アルバムは88年のビルボードR&B年間No1にもなる。そのアーロンのソウルボーカルとTeddyがNJSにRomanticnな味付けをしたのが「Spend The Night」でした。アルバムからの5枚目のシングルでR&Bで15位のヒットとなっています。マイケルもこの曲にインスパイアーされてRememberを作り上げたと思います。

 「Remember The Time」は、チャート的にはR&Bでは見事1位を獲得します。しかしHot100では3位止まり。「Black Or White」に続く連続1位は獲得できませんでした。King Of Popと評されるMJですが、今回の曲は明らかに黒い。そこがPOPやROCKのエアープレイでポイントが稼げなかったのかもしれません。
 
 そしてMusic Video、いやショート・フィルムも制作されます。「BAD」以来の集団Danceも披露されます。今回の舞台はエジプトの王国。スタジオに大規模なセットを作り、そこで撮影されます。さらに衣装なども細かく設定にあわせて作られている。ここでもマイケルの細部にわたるこだわり、妥協のない姿勢を感じます。当時、ターミネーター2でも使用され話題になった最先端CGも使われ、かなりお金をかけているのがわかります。
  監督が、ジョン・シングルトン。詳しくないのでウィキペディアより。『1991年、「ボーイズ’ン・ザ・フッド」で監督デビュー。第64回アカデミー賞で監督賞と脚本賞の2部門でノミネートされた。監督賞ノミネートは史上最年少の24歳であり、またアフリカ系アメリカ人初だった。』
 ジャネット・ジャクソンの『ポエティック・ジャスティス』も手がけていました。でもおれこの人の作品見たことないです・・・
 そもそもなぜエジプトなのか?アフロアメリカンのルーツであるアフリカ大陸にあったこの素晴らしい王国にこだわったように思います。
 そしてキャスティング。王国の王様役に、黒人俳優のスター、エディー・マーフィー。マイケルの友人でもある彼は快く承諾。(この後マイケルもお返しにエディーのソロアルバムにゲスト参加しています)
 
 
 
 女王役に、スーパーモデルのイマン(ソマリア出身)を起用。(後にデヴィッド・ボウイと結婚)ブラックビューティーです。

 

 このイマンは、マイケル的にもなかなか因縁深い。
 兄ジャーメインのアリスタ移籍の第一弾アルバム『ジャーメイン・ジャクソン』(邦題『ダイナマイト』84)からの2ndシングルになった大人の極上バラード「Do What You Do」-恋にふるえて-のMusic Videoにも彼女が起用されているのです。この作品は、ブラックゴッドファーザー的なコンセプトで作られたもので、ジャーメインとイマーンの濃厚なLoveシーンもあります。


 
さらに言うと、この時のイマン、後にジャーメインと不倫関係にあったと言われるホイットニー・ヒューストンにも雰囲気が似てる。

 そして今作です。マイケルの作品の中でも一番大人Tasteの作品かもしれません。作品の中でマイケルは初めてKissシーンを演じますが、その相手もこのイマンなのです。

 
  
 当時、マイケルとジャーメインの仲はけっしてよいものではなかったので、ジャーメインはこのイマーンの起用をどう思ったのでしょう。たまたまといえばそうなのかもしれませんが。兄弟がMusic Videoで初めてで唯一のキスシーンを演じる相手が同じというのはどうなのよ~。
 ただこのシーンに関して言えば、マイケルはちょっと固い。ちょっと最初のファーストタッチががずれてる(汗)。取り直しははなかったのでしょうか?その点、Playboy的でもあったジャーメインのキスシーンは、余裕です、場慣れしています。さすがです、ジャーメイン兄貴(爆)。
 他にもNBAのスーパースターだった、マジック・ジョンソンも起用。



 前回の「Black Or White」では、「肌の色なんか関係ない。黒人か白人かなんてことは問題ではない」というメッセージが歌われますが、作品の中では明らかに黒人としてのアイデンティティーを感じます。さらにこのショート・フィルムでは、俳優業、モデル業、スポーツ選手のブラックスーパースターを起用。アフロアメリカンの強さ、美しさ、才能の豊かさ、言ってみれば黒人の優秀性を主張しているのも感じずにはいられません。
 マイケルの作品の中でのダンサーも、これまで白人、黒人まざっていたと思いますが、今回エジプトという事で、真っ白な肌のダンサーはいないように思います。MJだけが白い。やはり自分の意志に反して病気で肌が白くなってしまったマイケルの主張をここにも感じてしまうのです。
 ここまでの主張が、一部の白人層の受けを悪くした面もあるかもしれません。これまではMVが相乗効果を生みさらなるヒットに結びつきましたが、この黒すぎるMVが、かえってHot100で1位を獲得できなかった事に影響したかもしれません。
 
 「Remember The Time」の欧州版シングルのクレジットの中に、“Didicated with Love to Diann Ross”(ダイアナロスに捧ぐ、愛を込めて)という記載があります。

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(『FOREVER MICHAEL』Remember The Time マキシシングル図鑑より転載 http://mjj.blog.shinobi.jp/Entry/318/
 
 『Michael Jackson For The Record』にもダイアナ・ロスに捧げられたセカンドシングルという記載がある。その観点でこの曲のリリックを見るとけっこう納得する。
 
 覚えているかい 僕らが恋に落ちた日のことを
 覚えているかい あの秋の日 僕らは一日中一緒だった
 覚えているかい どんな話をしたか 世が明けるまでずっと電話をしていた
 覚えているかい あの特別な時間を 僕の心の中では 何度も何度も繰り返されている
 あの素敵な思い出は 僕の大切な宝 
 何を言ったかは問題じゃない 2人だけの体験を僕は忘れない
 覚えているかい あの公園 あの海辺
 君と僕とで行ったスペイン
 覚えているかい 
 僕は・・・僕は・・・ 
 
 ダイアナ・ロスはマイケルより15歳年上です。そのダイアナの事をマイケルは自伝『Moon Walk』の中で「僕は今でも彼女のことを愛しています。本当に彼女に夢中なのです。彼女は僕の母であり、恋人であり、そして姉であり、そうしたすべてが一緒になった驚くべき人だったのです」という事まで言っています。
 この「Remember The Time」について兄・ジャーメインの自叙伝でも触れられていて、ジャーメインも直接マイケルからダイアナへの思いを聞いた感じ。
 「彼らがどれほど親密になったかについては、ほとんど常に、半自叙伝的であった彼の音楽が代弁しています。1992年にリリースされた「Remember The Time」の切ない歌詞を聴いてください。その歌は、マイケルが私に話したように、ダイアナ・ロスを念頭に置き、書かれたものでした。彼にとっては、彼から逃れた1つの大きな愛でした」
 と「Remember The Time」のリリックに言及もしているのです。
 (Shanti&AnandaさんのBlogより引用 http://jaxon22.blog135.fc2.com/blog-entry-787.html


 この曲のショートフィルムもその視点で見ると妙に納得する。女王役のイマンがダイアナ。まさにモータウンレコードの女王。そしてキングのエディー・マーフィー役が、モータウンの社長ベリー・ゴーディ。ダイアナはベリー・ゴーディーの愛人と言われていました。そして女王とマイケルは密会し(すでに二人は深い中で再会したともとれる)口づけをかわす。
 そして終盤にかけてマイケルのボーカルは、攻撃的な切実さともいえるエモーショナルなVocalで歌い続けるのです。ジャーメインが言うように実体験に基づくリリックなのかもしれない。

 久々の集団Danceシーンも魅力的。これまでにないダンスです。エキゾチックな味付けも感じます。
 
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 ショートフィルムでは素晴らしい群舞に魅了されますが、この曲はステージ上のパフォーマンスはかなり少ない。最優秀男性R&Bソウルシンガー賞 (「リメンバー・ザ・タイム」)と最優秀男性R&Bソウルアルバム賞(『DANGEROUS』)を受賞したソウル・トレイン・ ミュージック・アワードで、このSFでのダンスパフォーマンスがされますが、前日に足を負傷したマイケルは車椅子に座ったままのパフォーマンスとなる。作品と同じように凝った演出もされますが、座ったままというのもあってあっていまいちパッションが薄い。
 Dangerous World Tour時でも入念にリハーサルもされますが、実際のツアーでセットリストに入りませんでした。ブートでのリハーサル映像を見るに、いまいちステージ上での迫力がうすい。すごくいい楽曲なのに、なんでだろ??

 作品のエンディング。王女と謎の旅人(マイケル)との間に何かがあった事を感じた王(エディ)は、嫉妬しMJを捕らえようとします。そして最後にマイケルはとびきりの笑顔を残し消えていくのです。




 このジョン・シングルトン監督による「Remember The Time」のフィルムは、マイケルの映像作品の中でも最高にRomanticでファンタジー感もある作品だと思います。シングルトン、素晴らしい作品に仕上げてくれた。マイケルもこの仕上がりにきっと満足したに違いない。そしてこのようなタイプの作品をもっとみてみたかったという思いももちます。
 このあとも『Dangerous』からシングルカットは続き、Music Videoも制作されます。どれもカラーの違うこれまでにないマイケルの姿が見られます。『Dangerous』からの3rdシングル「In The Closet」も魅力的です。それはまた次の機会で。

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トミーマーチ

リメンバ、ダンスも結構玄人受けするようで、EXILEのメンバーもこのダンスが好きだと言っていました。ステージ映え、という意味では、ジャネットの「Escapade」をライブで観ましたが、サーカスのような派手さで、エンタメワールドを感じた事を覚えています。そんな絢爛豪華な演出をするのも、「Dangerous」と対極で面白かったかも知れません。
監督、亡くなっていたんですね。知りませんでした。メイキングで楽しそうにノッていたのを思い出します。ファンには大切な宝物のSFを遺していただき、感謝感謝ですね。
by トミーマーチ (2021-04-03 01:09) 

amber35

 「Remember」のゴージャスなRomantic感をステージで再現してほしかったです。ジャネットの「エスカペイド」はそんな演出だったんですね~(『Rhythm Nation』ツアー時かな)。生で体感できて最高ですね~~。
 「Remember The Time」のSFはほんとスペシャルな作品となりました。
by amber35 (2021-04-04 21:29) 

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