SSブログ

◆ マイケル・ジャクソン逝去後の作品、『MICHAEL』を聞いて [マイケル死後・プロジェクト]

                                                                                                                           2011.1.3Upmichaelmmm.jpg

 ここにきて疑惑の3曲がマイケル本人の声ではないと問題となっているマイケル・ジャクソンの死後に発売された『MICHAEL』(2010.12.15発売)。当時発売された時の記事を再Up(一部修正・加筆)。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 公式サイトではNEWアルバムという言い方もされている。マイケルのアルバムジャケットは、87年の『BAD』を最後に自身の写真は使用されなくなった。『Dangerous』の時もその世界観をアートな絵でジャケットに表現したけど、今作のこれまでのMJの軌跡を表現したジャケットも違和感ない。
 賛否両論の『MICHAEL』がでて2週間ちょっとたちました。そういうおれはどうかというと、これまでもあちこちで非公式の音源を入手or購入しているので、とにかくマイケル・ジャクソンの曲は聞きたい!という思いが根底にあります。
 今回厳選され収録されたという10曲を聴いて、最初は素晴らしいと思いました。いい曲が多くて入りやすかった。しかし、聞き込んでいくうちに評価が変わってきました。


 それは曲の完成度に差があるということです。そしてマイケルの意思が反映されていない選曲にコンセプトを感じることができない。今回のアルバム収録曲には、こういうグループ分けができると思います。
 
①  完成している曲だが、最終的な段階でアルバム選考から外れたもの(特に『Invincible』期)にさらに手を加えた(そこにマイケルの意思はない)。

②  大まかな音とボーカルはふきこんであるが未完成の曲にかなりの手を加えた。

③  08年に発売されると言われていたアルバム収録予定曲(ほぼ完成曲)

 マイケル・ジャクソンの実質的なソロアルバムは、エピックに移ってからのクインシー・ジョーンズと組んだ『オフ・ザ・ウォール』(79)からだと思うのですが、クインシーが主導とはいえ、そこにはMJの明確な意思を感じた。それは『スリラー』(82)『BAD』(87)と時が過ぎるとともにMJの意思はさらに強まった。
 90年代に入り、『DANGEROUS』(91)もそう。クインシー・ジョーンズと離れ、テディ・ライリーという新たな才能と組んだのはマイケルの意思。
 『HISTORY』(95)は、意思というより悲痛な訴えだった。メディアの理不尽で非常識な扱いへの反撃だった。そして今となってはマイケル最後の作品となった2000年発表の『INVICIBLE』。この作品は98年の春頃から製作が開始され、最終的には2年の歳月がかかっている。このアルバムは、当時、ブランディー&モニカ、デスチャ、J.LO、トニー・ブラクストン、Whitneyなどを手がけビックヒットを連発、R&Bの伝統をおさえつつ独自の斬新なスタンスでトップ・プロデューサーとなったロドニー・ジャーキンスをメインプロデューサーに迎えた作品でした。ロドニーを選んだのもMJの意思。
 評価が分かれる作品のようですが、おれ的には、乗りまくってるロドニーの最高のエナジーとMJが融合したすばらしいアルバムでした。トッププロデューサーの力を借りていても、彼らの色に染まることはなく、最後は彼らがMJ色に染まった。
 この時も、かなりの楽曲を作り上げたみたいですが、最終的に絞り込んだのもマイケル・ジャクソン。自分のコンセプトとプロフェッショナリズムにそってセレクトした。なぜこの曲を落とすのか?という思いももった人もいるかもしれませんが、作り上げた作品はマイケル・ジャクソンの作品なのですから、(時にはレコード会社の商業主義とぶつかることもあるでしょうが)最終的にマイケル・ジャクソンが判断を下すのが当然でしょう。
 93年の陰謀で失墜させられたMJの権威を、再びこのアルバムから取り戻せるはずだった。しかし2000年代はMJにとってさらに過酷なDECADEになってしまった。今でも、何か大きな力がMJをシーンから抹殺しようとしていたと感じてしまう。所属レコード会社の味方であるソニー(当時の社長・トミー・モトーラ)でさえも理解に苦しむプロモーション活動をする。
 そして03年に再び悪夢の中に陥れられる。そこから裁判や、いわれのない誹謗中傷を浴び続け音楽活動どころではなかった。05年に完全無罪判決が出ますが、疲れ果てた心身を回復するのにさらなる時間を要した。音楽活動(創作活動)はできなかったけど、子供たちと触れ合う時間はMJにとっては何よりの癒しだったと思う。
  
 こういう視点でみると、今回のアルバムで個人的に特にひっかっかたのがテディー・ライリーが制作した3曲です。今回のマイケル逝去後のアルバム発表に対して、クインシー・ジョーンズは明確に反対しています。マイケルへの冒涜だと言っている記事を見ました。『スリラー25周年盤』でからんだwill I amも否定派。
 これに対し、今回のプロジェクトでかなり中心的な役割を果たしているテディー・ライリーは肯定派。ただ、否定派のクインシーに対して「爺さんは引っ込んでろ」的な発言を見たのですが、事実ならちょっと失望。テディーもマイケルと多くの時間を過ごし、彼の理解者、代弁者と思っているかもしれないけど、度か過ぎるとおごりになる。テディーもマイケルとのつきあいの長さから、彼のことをわかっているような思いもあるかもしれないけど、やはりマイケルを導いたクインシー・ジョーンズの言葉は重い。
 テディー・ライリーはもちろんFav ProducerでありFavアーティストですが、正直、最近の彼に勢いはなかった。ヒット曲もうまれてなかったように思う。真実かどうかわかりませんが、破産したとか、子供と確執があるとか、あまりよいニュースも入ってこなかった。最近のシーンを熟知してないのであまり語れませんが、最先端のサウンドを生み出すエナジーはうすい。それは今回の3曲からも感じる。
 そして、やはりMJのボーカルが問題です。テディもエフェクトを効かせているのを認めてますが、そういう処理を施せなければならないMJのボーカルをあえて作品にする必要があったのか?3曲ともキ楽曲のキャッチーさはあると思いますが、曲としての作りこみに深さがない。マイケルのサウンドに対するこだわりは(それこそひとつの音の響きまで)半端じゃない。それは『This Is It』でも垣間見れた。サウンドも細部にいたるとこまで完璧さを求めた。そしてそこに最高のVocalと融合させる為、さらに満足がいくまで、歌い続ける。プロデューサーがOKをだしてもMJ自身が納得がいかないと歌い続けた。そしてサウンドとボーカルがパーフェクトな調和を見せひとつの曲が出来上がる。
 今回、テディーが制作した3曲はこのバランスが悪い。マイケルのボーカルに厚みがない。母親をはじめ家族がこれはマイケルでないといっているのも理解できる。
 ネットでも出回っている『7even』という偽アルバムを私も買っちゃったのですが、最初マイケルの声かと思ったらジェイソン・マラカイという人とわかってびっくりしました。『7even』はマイケル・ジャクソンが発表しようとしていたアルバムではありません!(でも数曲、貴重な未発表曲は収録されていますが)今回のボーカルは、実際マイケル自身のボーカルなのでしょうが、その魅力は半減されている。加工しなくては使えない素材ならそれは使う必要はなかったのでは。
 プロモーションの一環なのか?ブラザーのジャッキーも製作に関わっているという情報もみたし、ロドニー・ジャーキンスやテディー・ライリーという生き証人もいるわけだし。替玉ボーカルでMJ名義の名前のアルバムを出すほど、マイケル・ジャクソンを冒涜している行為はないのでそんな事をするわけがないし、あり得ない事です。
 
 さらにボーカルについて言及すると、MJの唱法は年齢とともに変わっている。変えていかなければならない身体的な状況にも陥っていたのかもしれない。
 『オフ・ザ・ウォール』と『スリラー』でも微妙にちがいますが、80年代前半のMJのボーカルは最高です。おれはいつも伸びやかという安直な表現しかできないのですが、その歌声に魅了される。『BAD』の頃から、ちょっとシャウトが強まったように思います。それはワイルドさを狙ったとこもあるかしれませんが。さらにのどをならす感じの独特の歌いまわし。ボーカルでリズムの一部を表現している感じ。この唱法は天才的。
 90年代に入り、『Dangerous』ではシャウト唱法はさらに強まっていきます。『History』は、MJの悲痛な叫びが詰まっているのでさらに攻撃的。「You Are Not Alone」は美しいですが、『オフ・ザ・ウォール』の「She is out of my life」の美しさには及ばない。
 そして『インヴィンシブル』です。当時聞いたとき、MJのボーカルの七変化さに驚きました。「2000 Watts」なんてこれってMJの声なの?って思いましたもん。年をとるとやはり低音になるしボーカル力も弱まると思う。MJは、ボーカル力の弱体化を実感していたのではないかとも思います。それをカバーするために、変化球的に様々な歌い方をした。せざるを得なかった気もします。
 2000年代に入って、裁判で創作活動の時間が奪われましたが、なかなかアルバムを出せなかったのは、ボーカルが万全でなかったからではないかとも思うのです。ボーカルは、肺、鼻、のど、そういう呼吸器官も万全でないといけません。(歌手と名乗ってタバコを吸ってる人はプロ意識はないと思う)素晴らしい楽曲がそろっても、それを歌いきるボーカル力がもどっていなかったのではないかと推測してしまうおれです。鼻の整形も鼻腔器官に影響を及ぼしているかもしれません。そういう意味で、万全の状態で歌えてない事が本来のマイケルのボーカルに思えないと言われている要因かもしれません。
 
 「Hollywood Tonight」も、曲は良いと思いますが、後半はテディ自身をアピールしてるかのように彼の呟きが延々と続く。
 そして、個人的には、これこそ冒涜ではないのかと思ったのが「Monster」。マイケルの「ハッ」という声がサンプリングされ使われている。過去にダイアナとの「Eaten Alive」の12インチに「ダッ」とかそういうのを遊び感覚で挿入されたものもありますが、あのような使われ方とは明らかに異なる。マイケルのボーカルの合間に入れるこういう声は、マイケルの間合いで入るものであり、作り物をいれるものではない。50セントが参加しているのはかなりの話題性ですが、サウンドのつくりは全然満足していません。マイケル・ジャクソンが生きていたらOKの出るレベルではないと思う。
 「Breaking News」もネットで最初に聞いたときはかなりときめきましたが、聞き込むと深さがない。テディーが最終的に作り上げたこれらの曲の素材がどの程度完成していたかはわからないのですが。どちらにしろ、テディーがその才能とテクノロジーでここまでのものとして作り上げたとしても、マイケルがOKをだすレベルとは思えない。今回の件で、テディ―はかなり注目を浴びています。Blackstreetのアルバムを出す記事も見ました。
 
 今回、ハイライト曲のひとつが「Behind The Mask」だと思います。この曲の当時の経緯は、ライナーノーツにもありましたが、今回なんで収録可になったんでしょうね。この曲は完成されているのを感じます。80’Sのマイケルのボーカルとグルーブを感じます。かっこいい。おれがマイケル・ジャクソンの虜になったのはこのかっこよさなんです。80’Sのマイケルはかっこよかった。90年代にMJに出会った人は少女漫画の主人公のようなMJを好むのかもしれませんが、おれが好んだのは、しなやかでかっこいいマイケル・ジャクソンでした。その頃のマイケルのかっこよさを感じる1曲。擬似ライブの演出は悪くはないけど、当時のトラックもこういう演出だったのかな?(グレッグ・フィリンゲインズのバージョンが近いか)当時の音に現代的な音をあわせているようですが、キーボードとドラム・プログラミングというけっこう核の部分を担っているのがジャム&ルイスの愛弟子、ジミー・ライトなのがちょっとうれしい。
 
 もう一つのハイライト曲が「Hold My Hand」。08年に発売されると噂されていたマイケルの新作の1stシングルとも言われていた。流出時の曲は、エイコンのボーカルが主体でしたが、今回主役は入れ替わっているのは感じます。ヒューマンチックなエイコンらしい良い曲。本来出るべきだった曲がこうして世に出るのはよいと思います。いい曲だし。
 08年辺りにマイケルの新作が発表されるという話はあった。アルバムを出せるほどのクオリティーの曲はっそろっていたように思います。しかし、MJは相当の覚悟でアルバム発表を考えていたため、最高のタイミングを探っていた。まだ全世界の目がMJにいってなかった。
 そこでMJサイドは、『スリラー』という自身の金字塔アルバムの25周年記念盤で、カニエ・ウェストや、ウィル・アイ・アムら旬のProducerによる新たな解釈の楽曲を加えて2008年3月に発表。離れていたリスナーも注目した。そして翌年ロンドンでのツアー「This Is It」の発表。世界の目が再びMJに集まりはじめていた。ついに新作を発表できる環境ができた。そんな矢先での2009年6月25日の訃報でした。
 レニー・クラヴィッツとの「Another Day」も完成されている感じです。レニクラもアルバム持っているFav Artist。マイケルとの共演は意外でしたが。最近はちょっと勢いおちたけど、『インヴィンシブル』期に制作された当時は、グラミーも獲得し、マイケルが声をかけたのもわかる。この曲はクレジット見なくても、レニクラ好きなら彼のギターPlayで彼とわかると思う。『Invincible』に収録されてもよかったと思いますが、やっぱリークされたのが原因ですかね、最終的にアルバムに収録されなかった。
 
 バラードの4曲もほぼ完成された状態のように思います。かつてマイケル・ジャクソンの愛に満ち溢れたバラードを聞きたいと思いましたが、これらの曲はきけてよかったです。オーソドックスな作りがかえって新鮮。ありそうでなかったマイケルのバラード。バックボーカルもしっかりしている。
 「Best Of Joy」の美しいメロディーラインには魅了された。なんか懐かしさみたいなのも感じたし。「Much Too Soon」も素晴らしいバラード。アコディーオンが郷愁を誘う。
 「Keep Your Head Up」も素晴らしい。ただマイケルのボーカルが抑え気味の気が。後半、もっとシャウトがはいってもよさそうなのだけど。
 「The Way You Love Me」もさらに手直しされています。既出のバージョンの「チャ、チャ、チャン」ってとこが消えているのはこの曲の魅力を低下させている気が。
 
 以上好き勝手に書きましたが、『MICHAEL』を聞いた私の感想です。今後もMJ関連の作品が出れば間違いなく買います。
 
 今回、ロドニー・ジャーキンス関連の作品がないのはなぜでしょう。最初「Breaking News」、ロドニーProかと思いましたもん。R.kerryの作品もまだあるみたいだし。以前にもとりあげた、当時、兄・ジャーメインとの確執をうんだLA&BABYFACEの作品も聞いてみたい。持っている人は持っていると思うのですが、私もけっこうアウトテイクもんを普通にCDでいい音で聴いているのが数曲あります。
 9.11テロ時のチャリティー・ソング「What More Can I Give」は素晴らしい曲です。「Gangsta(No Friend Of Mine)」もかなりのヒップホップ色の強い曲で、MJのバックボーカル的なシャウトが魅力的。「A Place Without No Name」もメロディーラインが魅力的でマイケルのボーカルがはえる。ジョニー・マティスに提供されたポール・アンカとの共作曲のマイケルのデモバージョン「Love Never Felt So Good」も躍動感に満ち溢れたLove Songでマイケルのボーカルとgrooveが全開。次回予定されているという『Off The Wall』のデラックス盤に収録されることも期待しています。
  
MICHAEL

MICHAEL

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EPIC
  • 発売日: 2010/12/10
  • メディア: CD
Hold My Hand

Hold My Hand

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 2010/12/14
  • メディア: CD

コメント(2) 
共通テーマ:音楽

コメント 2

MJ'S

今回のボーカル替え玉の騒ぎ、私はマイケル自身のものだと思っています。管理人様もそのような見解のようにお見受けします。
そもそも疑惑が出るようなものを発表する必要があったのかと思っています。
by MJ'S (2018-09-15 13:21) 

amber35

こんちは。ヤフーニュース等でも騒がれていないし、ソニーもマイケルのボーカルという発表もした感じで、大騒ぎにもならずなんとなく落ち着いた感じですね。

個人的には、マイケルの尊厳が守られてよかったと思っています。
by amber35 (2018-09-30 10:21) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント