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◆ Find Me A Girl / The Jacksons (77)  マイケルのDeepなボーカルに酔いしれる [楽曲・アルバムレビュー(ジャクソンズ名義)]

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 与えられた音楽だけでなく、自分たちで音楽を作りたいという欲求が抑えれないジャクソン兄弟は、モータウンからエピックソニーへ移籍します。しかし、エピックもいきなりすべてをジャクソン兄弟に委ねるリスクを侵せず、前回紹介したように、当時の売れっ子プロデューサー、フィリーソウルのギャンブル&ハフにプロデュースを任せます。

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 前作、ジャクソンズ(ジャクソンファイブという名称はモータウンに帰属していたので使えなくなります)としての1st『The Jacksons』は、シングルヒットはでたものの、モータウンでデビューした時のようなビルボード1位を獲得するような勢いではありませんでした。
 
 Top ProducerのJam&LewisやBabyfaceも述べていましたが、ビックアーティストを手がけるのは魅力的だがセールスが振るわないと失敗といわれ、プロデューサーとしての評価もおとしてしまうリスクもあると。
 ジャクソンズの「Enjoy Yourself」もオージェイズや、ジェリー・バトラー、ビリー・ポール等とならんでギャンブル&ハフのヒットコレクションに加わりましたが、ギャンブル&ハフもトッププロデューサーとしてのプライドもかけ、さらなるヒットをねらい引き続き2nd『Goin Places』を製作します。

ゴーイン・プレイシズ~青春のハイウェイ

ゴーイン・プレイシズ~青春のハイウェイ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2010/06/23
  • メディア: CD
 
 路線は、ほぼ1stの延長。アップ曲が増えた印象ですが、全体的な感触は1stと似てる。ストリングスとホーンを基調としたフィリーサウンドというものが、もともとそんなに幅が広くない気はします。
 このアルバムからは、タイトル曲、ギャンブル&ハフにしては高速ピッチの「Goin’ Places」がカットされますが、R&Bで8位。Hot100では52位止まり。続く2nd「Find Me A Girl」(僕のガールフレンド)がR&Bで38位にチャートインしたのみ。
 
 「Find Me A Girl」はヒットはしませんでしたが、個人的にはすごく好きなバラードです。リリックがすごく好き。恋する人なら誰もが抱くすてきな娘を求めるSweetで切ないリリック。ジャクソンズとしてのボーカルワークも素晴らしい。ティーンエイジャーのマイケルのボーカルも『スリラー』での「Lady In My Life」を思わせるDeepでちょっとJazzyな大人びた感じもする。

 このジャクソンズとしての2ndはセールスも振るいませんでした。トッププロデューサーのギャンブル&ハフが手がけ、楽曲もいいし、平和を訴えるメッセージソングも折り込んだ。リードボーカルはマイケル・ジャクソンなわけですから、アルバムの完成度が悪いわけはないのですが、ヒットには結びつきません。ファンは、もっとファンキーでエネルギッシュなジャクソンズを求めていたように思います。
 フィリーサウンドは、黒さはうすくエレガントでPOP感が強い。エピックとしては、ジャクソン兄弟をR&Bのフィールドだけでなく白人層でも受けるスタイルをねらった。その辺りのズレも生じたのかもしれません。
 マイケルも、「フィリーサウンドとジャクソン兄弟の相性が悪かった」と。偉大なプロデューサーの評価を自分たちが落としてしまったかもしれないとまで述べています。
 ギャンブル&ハフも、トッププロデューサーの維持もかけて今作に臨みますが、彼らが力を入れれば入れるほどフィリー色が強まりジャクソンズのカラーが失われていく感じです。まだジャクソン兄弟は、フィリースタイルに染まるには若すぎたのかもしれません。
 ここでふと思うのが、ジャーメインがジャクソンズに残っていたらというIF(仮定)です。ジャーメイン自身もモータウンでのソロアルバムで、スティーヴィー・ワンダー制作の「Where Are You Now」の他フィリーソウル風の曲も数多く歌っていていい感じに仕上がってる。もともと、ちょっと大人よりのこのサウンド、ジャーメインがアルバムでマイケルとリードを分け合っていたら相乗効果を生んだかも知れない等と思いました。
 ギャンブル&ハフはプロデューサーとしてだけでなくライターとしても素晴らしい。これらの曲をクインシー・ジョーンズなんかがProduceしたらすごくいい感じじゃないいかな。

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 フィラデルフィアソウルは、世界の音楽シーンに影響を与えた。フィリーソウルというカテゴリーを確立したといってもいいと思う。なじみやすいこのスタイルは日本の音楽シーンでもいまだに垣間見れる。
 ジミー・ジャムもフィリーサウンドにはかなり影響受けたと述べています。
 その功績において、ギャンブル&ハフはグラミー賞において、音楽での経歴の中で重大な貢献をした者に授与される「特別功労賞理事会賞」(受賞者にあのエジソンや、スティーブ ジョブズ、ジョージ・マーティン、ベリー・ゴーディー、クライブ・デイヴィス等、いずれジャム&ルイスも授与されると思う)も受賞。 
 そうは言ってもレコード会社的には、“相性が悪かった”ではすまない状況でした。モータウンからドル箱アーティストを獲得したと思ったら、実は落ち目のグループだったのでは、という評価に変わりつつありました。
 この作品の後、意志の人マイケル・ジャクソンは父親とともに行動をおこします。このときマイケルは19歳。マイケルは、ギャンブル&ハフとの限界を感じていました。そして、エピックの幹部とセルフ・プロデュースを勝ち取る為の交渉をします。このとき、エピック側はトッププロデューサーをつけているのに結果をださないジャクソン兄弟との契約を打ち切ることも考えていたといいます。
 しかし、前作でマイケルが単独で書き、ジャクソン兄弟が中心になって制作した「Blues Away」の完成度の高さや、ティトのリズムギターもナイスでFloorでうけた今作の「Diffrent Kind Of Lady」。そうしたジャクソン兄弟の確かな音楽性とマイケルの熱い思いが通じ、ついに次作でジャクソン兄弟に全面製作を任すという決断にいたります。
 セールス的には結果の出なかったギャンブル&ハフとの付き合いはこの後、途切れていたわけではないようで、近年もマイケルのから連絡が入り相談を受けていたと聞いて少し驚きました。 レコーディングの際も、興味津々のマイケルをいつもスタジオに招いていたといいます。マイケル・ジャクソンのソロでの成功は、クインシー・ジョーンズの名前が一番に出ますし、その通りなのでしょうが、このギャンブル&ハフからも相当なものを吸収した感じです。 マイケルとジャクソン兄弟は、念願のセルフプロデュースの権利を得ます。 しかしそれはジャクソン兄弟にとってもはじめて与えられたチャンスであると同時に、失敗は許されないラスト・チャンスでもありました。 そして、78年、ジャクソンズにとって、そして何よりもマイケル・ジャクソンにとっても転機となる運命の作品が発表されます。そのタイトルは、『Destiny』(運命)。


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