SSブログ

◆ Dirty Diana ダーティー・ダイアナ ハードエッジなマイケルが躍動、そしてダイアナに込めた意味とは   [No1ソング]

                  original 2009.5.16Upに加筆

dirrty003001.jpg

 『BAD』からの5枚目のシングルがきられ、Hot100で1位を獲得します。1枚のアルバムから5枚のビルボード1位。チャート史上新しい記録となります。さらにアルバムも2作連続、5曲以上のTop10ヒットをうむ(『スリラー』は7曲。『BAD』はこの時点で5曲。)という記録もつくります。

◆ USAにおける『BAD』のシングル発売日とチャート順位 (Hot-100/R&B) ◆

 87.8   I Just Can't Stop Loving You  (1位/1位)
 87.9   BAD (1位/1位)
 87.11  The Way You Make Me Feel (1位/1位)
 88.2   Man in The Mirror (1位/1位)
 88.4   Dirty Diana (1位/5位)         
 88.7   Another Part Of Me (11位/1位)
 88.7   Smooth Criminal (7位/2位)

 『BAD』からは、この後「Another Part Of Me」、「Smooth Criminal」(さらにUKでは「Leave Me Alone」「Liberian Girl」もカット)もシングルとなりますが、1位の獲得はできず、『BAD』からは5枚のシングルNo1という記録となります。
 これまではサントラ『サタデー・ナイトフィーバー』でビージーズが記録した4曲と並んでいましたが、マイケルがこの『BAD』でビージーズ超えをします。
 実は、同時期に『WhitineyⅡ』で、ホイットニーもNo1シングルを連発していましたが5枚目のシングルは9位どまり。この後も、ジョージ・マイケル、ポーラ・アブドゥル、そして妹のジャネット、90年代に入りマライア・キャリー、アッシャーも4枚のNo1シングルは出ますが、5枚目が獲れず。
 1枚のアルバムから5枚のNo1シングルを産むというのはとてつもない事で、この記録は破られないように思いましたが、2010年のケイティ・ぺリーのアルバム『Teenage Dream』で、ケイティもこの偉業に肩をならべます。ケイティサイドは、マイケル超えをねらい、6枚目のシングルカットの際、リミックスを出したり、DLの価格を下げたりといろいろと策をうったようですが3位どまり。マイケルファンとしては「ホッ」とした。

 さて曲の話にもどりますがタイトルの「ダーティー・ダイアナ」、曲のタイトルを見て多くの人が「ダイアナって誰?」って思ったはず。そしてマイケルファンなら、すぐにマイケルが敬愛するダイアナ・ロスの名前が思い浮かんだはず。

m_8ae6b
 
 愛するダイアナに、ダーティー、汚いという言葉をぶつけるマイケルの真意は!?ダイアナとはまたちがう女性なのか?私のBlogでも「Dirty Diana」のダイアナは?という検索ワードで過去記事へのアクセスが多かった。
 ウィキにも載っていますが、ウェンブリーでのLIVEの時、訪れていたダイアナ妃に「(あなたに)失礼だから今日は歌わない」というマイケルに、ダイアナ妃は「大好きな曲なので歌ってほしい」と伝えたと。
 ダブルミーニングを施したアルバム『BAD』。このダイアナというワードにもマイケルの思いが込められているのを感じます。


 「Dirty Diana」、このMusic Videoにはダンスはありませんが、MJにとって初めてのライブ的な演出の作品になります。個人的にはこの曲は『BAD』の中で一番好みじゃないです。マイケルの母、キャサリンも著書で「ギターの絶叫が続くこの曲はアルバムの中で一番嫌い」って。が映像を通してこの曲に触れるとかなり引き込まれます。

 4d034a6dc78f73b4f9e578bb043837b1.jpg
 
 このハードロック路線は、「ビートイット」('83 from『スリラー』)「State Of Shock」('84 withミック・ジャガー、Jacksons名義)から続いており、この後も引き継がれます。ただこれまでの曲はファンク色もありましたが、この曲に黒さはうすい。ギターはスティーヴ・スティーヴンス(当時はビリー・アイドルの相棒として名がうれた)を起用。MVでもマイケルとハードな息のあったパフォーマンスをみせています。

 8d069805eac971465fec584d51dd0326.jpg229f4c0382d606440d94d52d77cd731e.jpg
 
 ライブの臨場感はすごくでてるし、ほんとハードロックという感じの1曲。ギターとの録音のバランスはかなり素晴らしい。ドラマ性も感じる曲調だし。マイケルのハードロッカー的なパフォーマンスも様になってる。たしかにこれまでにないハードエッジなBADな雰囲気のマイケルがそこにいます。肌をここまで露出するマイケルもめずらしい。個人的には何回も見返すようなMVではないですが。

 2542573fb979aeba8e90ecf3ad6c2f1b.jpg
 
 曲の内容も、ある意味マイケルの心情を表現しているように思います。インタビューの中で、マイケルもこの曲は「グルーピー」をテーマにした曲と述べている。「ダイアナ・ロスの事を歌った」なんて微塵も言ってない。グルーピーとは、有名人と親密な関係を望む追っかけ、今で言えば一線を超えたストーカー的なファンという感じか。マイケルはビリージーン」でもこのテーマで曲を書いている。この後の「デンジャラス」でもその感触を感じる。

 一晩中あなたの愛に応えるわ
 侮辱されても私はあなたのとりこ
 それに そんな事気にならないわ
 トコトンまで行きましょう
 私はあなたのすべてになるわ
 もしも私をスターにしてくれるのならね
 
 汚いダイアナ ダーティーダイアナ
 そのやり方は汚いよ
  
 歌詞のタイトルとなっているダイアナといえば、すぐにマイケルと関わりのあるダイアナ・ロスを連想させます。当時その意味深なリリックで話題にもなりました。
 ダイアナ・ロスは、マイケルをはじめジャクソン兄弟のデビューやその才能を伸ばす事に尽力した人でもあります。マイケルもダイアナの事は母であり、恋人であり、姉であるというほど特別な存在でした。そんなダイアナをリアルに中傷する意図などあるはずがない。英国の故ダイアナ妃もいたし、センセーショナルな話題作りでダイアナにしたのだと思います。あと語感の響き。「ダーティーダ」っていう感じ。日本語を意識したわけではないだろうけど。マイケルも歌の中でこの辺も重要視する。

 f5e296609e73af939a53997b34b226a9.jpg
 
 MVの中にもダイアナを感じさせる女性がシルエットで登場します。どうみてもこれはねらってる。

diana2003001.jpgb8ac48e444b971528f6402554fa1ccc4.jpg
 
 以前「ダーティー・ダイアナ」の記事をUpした時、このように単なるネタ的要素が強いと記しましたが、その後、あらためていろいろな記事にふれて、ちょっと見解が変わってきました。
 ダイアナは、ロバート・シルバースタインという白人男性と71年に結婚している(白人男性というところに彼女のスタンスを少し感じてしまう)。学校の先生だったというシルヴァースタインとスターのダイアナとの出会いは、たまたま入った紳士服店だそう。双方惹かれあいその場で電話交換をしたというから驚き。その後、彼はダイアナのマネージャーとなる。その彼とは77年に離婚している。
 その間に三人の娘が産まれるが、驚きべきは最初の子ロンダは、シルヴァースタインの娘ではなく、モータウンレコードの創始者ベリー・ゴーディーとの子という衝撃の事実。しかし彼はそれを承知の上でダイアナと結婚したようだ。しかし、ベリーの影は絶えずダイアナにつきまとっていたようで、それが大きく影響し離婚することになる。
 ダイアナが離婚したのは33歳、その時マイケルはまだ19歳。まだリアルに結婚を意識する年齢ではないでしょう。ただダイアナは憧れの年上の女性だったと思う。
 ダイアナの最初の結婚の時、マイケルは祝福している。
 そして「彼女には幸福になって欲しかったですが、少しは傷つき、嫉妬したことは認めなければいけませんね。だって、僕はずっとダイアナのことを愛していたわけですし、これからもずっと愛していくでしょうから」と素直な気持ちを綴っている。
 しかし、マイケルも男性として成熟していく過程で、リアルにダイアナとの結婚を望みだした部分もあったのではないかと感じる。しかし、大人のダイアナはそれはマイケルにとってプラスではないと思ったのではないだろうか。ダイアナが最初に結婚したのは、ある意味ベリー・ゴーディーからの支配から抜け出すためだった要素もあるかもしれない。離婚後、恋多きダイアナではありましたが、再婚は考えていなかったようです。
 しかし、ツアーを終え休息場所として滞在していたバハマで、ノルウェーの船舶王アルネ・ネス(大富豪)と運命的な出会いをし恋に落ちたようです。そして86年にダイアナは再婚します。
 マイケルは、ダイアナの再婚はないと思っていたろうし(多分、ダイアナもマイケルにそう言っていた気がする)、再婚するなら自分だと思っていたのかもしれません。ピュアなマイケルにとって、ダイアナのこの行為は裏切りのように思えたのかもしれません。
 その思いが「ダーティー・ダイアナ」として生み出された部分はあったかもしれません。ただリアルにダイアナを中傷する意図はなかったと思います。でも悔しい思いをぶつけたかったという。ダイアナも大人の女性としてそれを受け止めた印象ももちます。だって自身のライブでこの曲を歌っているんだもん。マイケルに再婚はないといっておきながら再婚した事に申し訳なさも感じたかもしれません。

 しかし、今回このダイアナの背景を振り返ったとき、やはりこの歌のダイアナはダイアナ・ロスなのではという気もしてきた。マイケルは明確にグルーピーの歌と述べているも、グルーピーって熱狂的なファンという意味合いだと思う。曲中でもスターの関心を引くためにはセックスもいとわない的な表現もある。でも「ダーティー・ダイアナ」のリリックの中でのこの女性は、求愛を求めるのではなく、取引をしているのです。
 あなたの言うことをなんでもする、蔑まれようと。「私をスターにしてくれるのなら」と。この辺はかなり意味深。
 ダイアナ自身、けっしておしとよかで清純な女性ではないことを自身でも述べている。かなりしたたかな面もある。スターになるためならいろいろな事をしたかもしれない。当時、妻子もいたベリー・ゴーディーの愛人になっていたのだし。もしかしたらこの曲は、マイケル自身というより、ダイアナとベリー・ゴーディーを題材にした曲なのかもしれないって。
 この辺は、『Dangerous』の3rdシングル、クレジットにもある通りダイアナ・ロスに捧げられた「Remember The Time」のショート・フィルムにも感じてしまう(←またUpします)。
 ダイアナ・ロス自身もこの曲はお気に入りってサラッと言ってるし、自身のライブでも歌っていてまったくナーバスな話にもなってない。だたあえてダイアナを思わせる要素は、MVでもリリックでもあちこちに散りばめられている。それってマイケルの愛憎に思えてならない。「ダーティー・ダイアナ」はマイケルのダイアナへの屈折したLOVE SONGなのかも。

 そういったマイケルの狙いも見事にはまり、チャート1位を獲得しますが、おちるのも早かった。88年の年間チャートでも1位獲得曲なのに61位。(1位獲得曲の中で最下位)エアープレイでかせいだ感じ。ただ1位になるとならないとでは記録という点では全然ちがう。今は、アルバムからシングルをどんどんきるような時代ではないので、1枚のアルバムから5枚の1位シングルという記録は破られる事はないように思います。(⇒ ケイティ・ペリーに並ばれますが)
 アルバムセールスは『スリラー』には遠く及びませんが(といっても3千万枚という)、1枚のアルバムから5枚のNo1シングルを生んだアルバムという偉業は達成します。
 この後、まだ2枚シングルがきられます。さらに『BAD』プロジェクトの最終章、映画『ムーンウォーカー』も登場する事になります。
 
 〈追記〉

 伝説的なウェンブリーでのLIVEも収録した25周年記念盤。LIVEバージョンの「Dirty Diana」も収録されています。その後、あまりセットリストに入っていないので貴重です。あらためてLIVEバージョンを聞くと、すごい声量を求められる曲って感じる。マイケルもちょっと苦しそう。必聴と必見です。

BAD25周年記念デラックス・エディション(完全生産限定盤)(DVD付)

BAD25周年記念デラックス・エディション(完全生産限定盤)(DVD付)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2012/09/19
  • メディア: CD

コメント(0) 
共通テーマ:音楽

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント