◆ ジャーメイン・ジャクソンとホイットニー・ヒューストン [ジャーメイン・ジャクソン]
オリジナル2010.1.9Upに修正・加筆
ホイットニー・ヒューストンは、R&Bだけでなくシーンに名を刻んだディーヴァですが、マイケル・ジャクソンの兄、ジャーメインがホイットニーのスター街道への道のりに少ながらず貢献しているのはけっこう見落とされているように思います。
なんていうか、ジャーメインはホイットニーの陰に隠れてしまった感じで、なんだか不運という印象をどうしてももってしまうおれです。
ジャーメインとホイットニーの共演曲は5曲あります。(その内1曲はお蔵入り)
そもそもホイットニーとジャーメインを結びつけたのは、アリスタレーベルの当時の社長クライブ・デイヴィスによる所が大きい。このBlogでもジャーメインの軌跡をおっていますが、兄弟たちと離れてひとりモータウンに残りソロ活動をしていたジャーメインですが、モータウンとの契約を終え、新天地アリスタレコードへ移籍します。クライブ・デイヴィス率いるアリスタは、AOR色の強い大人のレーベルです。(所属アーティストは、ホイットニーの他、アレサ・フランクリン、ケニーG、バニー・マウロウ、サンタナ等)ジャーメインのアダルトな魅力ともマッチし、よい選択だったと思います。
ジャーメインは、もちろん素晴らしいボーカリストですが、プロデューサーとしての才能も十二分に持ち合わせていた。ジャーメイン自身も他のアーティストを手がけたい欲求もありました。
そんな中で、アリスタレコードではホイットニー・ヒューストンのデビュー計画が着々と進められていました。まず最初の戦略として、デビューアルバムを出す前に、名の売れたアーティストと共演しシーンにその名前と印象を植え付けるというものでした。そんなホイットニーのイメージとの相性も考えて組まれたのがテディー・ペンダーグラスとジャーメイン・ジャクソンだったのです。
ジャーメインに関しては、デュオだけでなくプロデューサーとしても彼女のデビューアルバムに大きく関わる事になります。
ホイットニーのシーンの登場は、84年6月、テディ・ペンダーグラスとの「Hold Me」(Whitneyの1stアルバムにも収録)でです。冬の暖炉の前で聞いたらいいような暖かで優しさあふれる曲。新人のホイットニーはベテランのテディに臆することなく歌っています。前半は抑え目ですが、後半は熱唱です。この曲はR&Bで5位(Hot100で46位)となります。実はこの曲がリリースされた事により、ホイットニーは、85年に発売される1stアルバムがデビュー作と認められず、グラミーの新人賞のノミネート資格をも逃す事になります。
次に彼女が登場したのはジャーメイン・ジャクソンのアルバムでです。ジャーメイン自身も、84年5月、新レーベルアリスタで心機一転のニューアルバム『Jermaine Jackson』(『ダイナマイト』)を発表。アリスタとしても、このアルバムの制作やプロモーションには相当の力いれた感じです。
ジャーメインとホイットニー・ヒューストンとのデュエット曲はこの時点で3曲あったようです。一番最初に録音されたのが「Don’t Look Any Further」という曲。これは実は没になったようです。というのも作者のデニス・ランバートは、最初にアリスタサイドにこの曲を提供し、ホイットニーのデビューアルバムの収録候補曲としてジャーメインとホイットニーのデュオで録音がされます。
しかし、なかなかホイットニーのデビューアルバムが出ない事にしびれをきらしたランバートは、この魅力的な曲をまた別のアーティストに提供し、そちらの方が先にシーンに出てしまったのです。
それがテンプテーションズの元ボーカリスト、めちゃパワフル&ソウルボーカルのデニス・エドワーズ(ついこの前2018.2.1逝去)。そしてそのデュオ相手がなんと後にマイケル・ジャクソンともデュオするサイーダ・ギャレットなのです。(ここでも微妙な因縁を感じます)曲調はグランドビート(という呼び名はまだ存在していない)調のベースラインが効いた斬新な曲で、R&Bで2位(Hot100で72位)となります。
この曲は、ジャーメイン&ホイットニーにとってもヒット確実のシングル曲だったので、彼らのバージョンが発売されなかったのは残念です。ここでもジャーメインの不運を感じます。
結局、ジャーメインのアルバムには2番目に録音された「Take Good Care Of My Heart」(「やさしくマイハート」)が収録されます。アーバンなこの曲は素晴らしい仕上がりです。この曲の主役はあくまでもジャーメイン。艶やかでソウルなジャーメインのボーカルが堪能できます。ホイットニーは終始おさえめ。カットされてもいい曲だったと思います。この曲は、ホイットニーのデビューアルバムにも収録され、そちらの方が多くの人に聞かれたように思います。
余談ですが、ジャーメインのこのアルバムには、マイケル・ジャクソンとのエキサイティングなデュオ曲「Tell Me I’m Not Dreamin」も収録されます。アリスタサイドもジャーメインもNo1ヒット確実と思っていたこの曲ですが、『スリラー』のヒットがまだ続いており影響を及ぼすというマイケルの属するエピックソニーが、シングルカットを許可しませんでした。(一説にはマイケル自身もシングルカットを望んでいなかったとあります)これも不運です。ただジャーメインのアルバムセールスには貢献したようです。ジャーメインでのアリスタでの1stアルバムはR&Bで見事に1位に輝いています。
ジャーメインも復帰したジャクソンズの『Victory』の発売も控えていましたが、ジャーメインに配慮してこのアルバムは7月末で発売を遅らせます。
そして85年に入り、ついにホイットニー・ヒューストンのデビューアルバム『Whitney Houston』(そよ風のおくりもの)が発表されます。
このアルバムでのホイットニーの成功は周知の通りですが、アルバムの完成度を高めているのが、シングルカットはされていませんが決して捨て曲ではないジャーメインによる3曲(内デュオが2曲、「やさしくマイハート」は再収録)。1枚のアルバムに同じ相手のデュオソングが2曲入るというのは珍しいと事だと思います。それだけ2人の相性のすばらしさを感じます。
そして3番目のデュオソングとなる「Nobody Loves Me Like You Do」(夢の中の二人)この曲も雰囲気的には前述のテディとの「Hold Me」と似ていますが、すばらしいSlow。ここではジャーメインのボーカルの七変化ぶりを感じます。
さらにジャーメインは「Someone For Me」という曲でプロデュース。マルチなジャーメインは楽器も演奏します。モータウン時代のサウンドっぽいダンスナンバーでいい感じ。
さらにホイットニーとジャーメインは、同年、アリスタが期待の若手を中心に編成したサントラ『パーフェクト』(ジョン・トラボルタ主演)で「Shock Me」という曲で共演。
この曲は、当時ジャーメインのサウンドブレインだったマイケル・オマーティアンによる疾走感あるエレクトリック・ダンスナンバー。(ジャーメインは主題歌の「パーフェクト」も担当しすばらしいダンスナンバーとなっている)。
これまで大人のバラードで共演してきた2人ですが、この「Shock Me」はめちゃかっこいいスピーディーなダンスナンバー。これまでと180度違う魅力を2人のデュオの感じます。すごく息もあっています。この曲は、ホイットニー・ヒューストンの曲としてもあまり知られていないですがかなりのクオリティーです。
最後となる4曲目のジャーメインとホイットニーの共演となったのは、86年のジャーメインのアリスタでの第2弾アルバム『プレシャス モーメンツ』での「If You Say My Eyes Are Beautiful」です。今度は新人のホイットニーではなくデビューアルバムで、一気にスターとなったホイットニーとのデュオです。心なしかホイットニーのボーカルに風格を感じます。
はっきりいってこの曲をシングルできらなかった理由がいまだに不明。
このアルバムからの先行シングルはスティーヴィー・ワンダーとの共作のポップなダンス曲「I Think Its Love」でHot100で16位のスマッシュヒット(R&Bでは14位)となり、エリオット・ウィレンスキーによる美しく力強いバラード曲をカットしていたら、当時のホイットニーの勢いもあって1位は確実だったと思います。ここでもジャーメインは幻の全米1位を逃す事になります。
ジャーメイン自身は、ホイットニーがこの曲のDuoの相手になった時点でシングル化はないと思い“むかついた”という発言もしています。アリスタサイドが、翌年に控えるホイットニーの2ndアルバムに向け露出過多になるのを恐れたとありましたが、つなぎの曲としても最高じゃないかと思うのですが。アリスタはホイットニーだけのレーベルでもないでしょうに。この曲がシングル化されなかった要因が他にもあると思います(それはまた別の記事で記します)
ホイットニーの船出に多大な貢献をしたジャーメインですが、2ndアルバムには、前作からのProducerがほとんど起用される中、ジャーメインは迎えられません。2人は恋愛関係(不倫関係)にあったというのは噂か?2人の距離を離すための方策だったのでしょうか。どちらにしろこのバラードがシングルにならなかったのは残念でなりません。
マイケル・オマーティアンとジャーメインが制作した 『プレシャス・モーメンツ』は素晴らしいアルバムです。おれ的にはジャーメインのアルバムで一番の出来です。
以上がジャーメインとホイットニーとの共演曲です。
マイケルが『BAD』からの1stシングル「I Just Can't Stop Loving You」のデュオ相手に、ホイットニーの名が上がった事がありましたが、ホイットニー側が断ったのはジャーメインへの配慮だったかもしれません。だってジャーメインはホイットニーとこれだけデュオソングがありながら、1枚もシングル化されていない。そのホイットニーが弟マイケルとのデュオで全米1位をあっさりとったりしたら、ジャーメインの心情はどんなものでしょうか。
シングル化されてはいませんが、この2人のデュオソングは今聞いても素晴らしく、輝き続けていると思います。
ジャーメインは、もちろん素晴らしいボーカリストですが、プロデューサーとしての才能も十二分に持ち合わせていた。ジャーメイン自身も他のアーティストを手がけたい欲求もありました。
そんな中で、アリスタレコードではホイットニー・ヒューストンのデビュー計画が着々と進められていました。まず最初の戦略として、デビューアルバムを出す前に、名の売れたアーティストと共演しシーンにその名前と印象を植え付けるというものでした。そんなホイットニーのイメージとの相性も考えて組まれたのがテディー・ペンダーグラスとジャーメイン・ジャクソンだったのです。
ジャーメインに関しては、デュオだけでなくプロデューサーとしても彼女のデビューアルバムに大きく関わる事になります。
ホイットニーのシーンの登場は、84年6月、テディ・ペンダーグラスとの「Hold Me」(Whitneyの1stアルバムにも収録)でです。冬の暖炉の前で聞いたらいいような暖かで優しさあふれる曲。新人のホイットニーはベテランのテディに臆することなく歌っています。前半は抑え目ですが、後半は熱唱です。この曲はR&Bで5位(Hot100で46位)となります。実はこの曲がリリースされた事により、ホイットニーは、85年に発売される1stアルバムがデビュー作と認められず、グラミーの新人賞のノミネート資格をも逃す事になります。
次に彼女が登場したのはジャーメイン・ジャクソンのアルバムでです。ジャーメイン自身も、84年5月、新レーベルアリスタで心機一転のニューアルバム『Jermaine Jackson』(『ダイナマイト』)を発表。アリスタとしても、このアルバムの制作やプロモーションには相当の力いれた感じです。
ジャーメインとホイットニー・ヒューストンとのデュエット曲はこの時点で3曲あったようです。一番最初に録音されたのが「Don’t Look Any Further」という曲。これは実は没になったようです。というのも作者のデニス・ランバートは、最初にアリスタサイドにこの曲を提供し、ホイットニーのデビューアルバムの収録候補曲としてジャーメインとホイットニーのデュオで録音がされます。
しかし、なかなかホイットニーのデビューアルバムが出ない事にしびれをきらしたランバートは、この魅力的な曲をまた別のアーティストに提供し、そちらの方が先にシーンに出てしまったのです。
それがテンプテーションズの元ボーカリスト、めちゃパワフル&ソウルボーカルのデニス・エドワーズ(ついこの前2018.2.1逝去)。そしてそのデュオ相手がなんと後にマイケル・ジャクソンともデュオするサイーダ・ギャレットなのです。(ここでも微妙な因縁を感じます)曲調はグランドビート(という呼び名はまだ存在していない)調のベースラインが効いた斬新な曲で、R&Bで2位(Hot100で72位)となります。
この曲は、ジャーメイン&ホイットニーにとってもヒット確実のシングル曲だったので、彼らのバージョンが発売されなかったのは残念です。ここでもジャーメインの不運を感じます。
結局、ジャーメインのアルバムには2番目に録音された「Take Good Care Of My Heart」(「やさしくマイハート」)が収録されます。アーバンなこの曲は素晴らしい仕上がりです。この曲の主役はあくまでもジャーメイン。艶やかでソウルなジャーメインのボーカルが堪能できます。ホイットニーは終始おさえめ。カットされてもいい曲だったと思います。この曲は、ホイットニーのデビューアルバムにも収録され、そちらの方が多くの人に聞かれたように思います。
余談ですが、ジャーメインのこのアルバムには、マイケル・ジャクソンとのエキサイティングなデュオ曲「Tell Me I’m Not Dreamin」も収録されます。アリスタサイドもジャーメインもNo1ヒット確実と思っていたこの曲ですが、『スリラー』のヒットがまだ続いており影響を及ぼすというマイケルの属するエピックソニーが、シングルカットを許可しませんでした。(一説にはマイケル自身もシングルカットを望んでいなかったとあります)これも不運です。ただジャーメインのアルバムセールスには貢献したようです。ジャーメインでのアリスタでの1stアルバムはR&Bで見事に1位に輝いています。
ジャーメインも復帰したジャクソンズの『Victory』の発売も控えていましたが、ジャーメインに配慮してこのアルバムは7月末で発売を遅らせます。
そして85年に入り、ついにホイットニー・ヒューストンのデビューアルバム『Whitney Houston』(そよ風のおくりもの)が発表されます。
このアルバムでのホイットニーの成功は周知の通りですが、アルバムの完成度を高めているのが、シングルカットはされていませんが決して捨て曲ではないジャーメインによる3曲(内デュオが2曲、「やさしくマイハート」は再収録)。1枚のアルバムに同じ相手のデュオソングが2曲入るというのは珍しいと事だと思います。それだけ2人の相性のすばらしさを感じます。
そして3番目のデュオソングとなる「Nobody Loves Me Like You Do」(夢の中の二人)この曲も雰囲気的には前述のテディとの「Hold Me」と似ていますが、すばらしいSlow。ここではジャーメインのボーカルの七変化ぶりを感じます。
さらにジャーメインは「Someone For Me」という曲でプロデュース。マルチなジャーメインは楽器も演奏します。モータウン時代のサウンドっぽいダンスナンバーでいい感じ。
さらにホイットニーとジャーメインは、同年、アリスタが期待の若手を中心に編成したサントラ『パーフェクト』(ジョン・トラボルタ主演)で「Shock Me」という曲で共演。
この曲は、当時ジャーメインのサウンドブレインだったマイケル・オマーティアンによる疾走感あるエレクトリック・ダンスナンバー。(ジャーメインは主題歌の「パーフェクト」も担当しすばらしいダンスナンバーとなっている)。
これまで大人のバラードで共演してきた2人ですが、この「Shock Me」はめちゃかっこいいスピーディーなダンスナンバー。これまでと180度違う魅力を2人のデュオの感じます。すごく息もあっています。この曲は、ホイットニー・ヒューストンの曲としてもあまり知られていないですがかなりのクオリティーです。
最後となる4曲目のジャーメインとホイットニーの共演となったのは、86年のジャーメインのアリスタでの第2弾アルバム『プレシャス モーメンツ』での「If You Say My Eyes Are Beautiful」です。今度は新人のホイットニーではなくデビューアルバムで、一気にスターとなったホイットニーとのデュオです。心なしかホイットニーのボーカルに風格を感じます。
はっきりいってこの曲をシングルできらなかった理由がいまだに不明。
このアルバムからの先行シングルはスティーヴィー・ワンダーとの共作のポップなダンス曲「I Think Its Love」でHot100で16位のスマッシュヒット(R&Bでは14位)となり、エリオット・ウィレンスキーによる美しく力強いバラード曲をカットしていたら、当時のホイットニーの勢いもあって1位は確実だったと思います。ここでもジャーメインは幻の全米1位を逃す事になります。
ジャーメイン自身は、ホイットニーがこの曲のDuoの相手になった時点でシングル化はないと思い“むかついた”という発言もしています。アリスタサイドが、翌年に控えるホイットニーの2ndアルバムに向け露出過多になるのを恐れたとありましたが、つなぎの曲としても最高じゃないかと思うのですが。アリスタはホイットニーだけのレーベルでもないでしょうに。この曲がシングル化されなかった要因が他にもあると思います(それはまた別の記事で記します)
ホイットニーの船出に多大な貢献をしたジャーメインですが、2ndアルバムには、前作からのProducerがほとんど起用される中、ジャーメインは迎えられません。2人は恋愛関係(不倫関係)にあったというのは噂か?2人の距離を離すための方策だったのでしょうか。どちらにしろこのバラードがシングルにならなかったのは残念でなりません。
マイケル・オマーティアンとジャーメインが制作した 『プレシャス・モーメンツ』は素晴らしいアルバムです。おれ的にはジャーメインのアルバムで一番の出来です。
以上がジャーメインとホイットニーとの共演曲です。
マイケルが『BAD』からの1stシングル「I Just Can't Stop Loving You」のデュオ相手に、ホイットニーの名が上がった事がありましたが、ホイットニー側が断ったのはジャーメインへの配慮だったかもしれません。だってジャーメインはホイットニーとこれだけデュオソングがありながら、1枚もシングル化されていない。そのホイットニーが弟マイケルとのデュオで全米1位をあっさりとったりしたら、ジャーメインの心情はどんなものでしょうか。
シングル化されてはいませんが、この2人のデュオソングは今聞いても素晴らしく、輝き続けていると思います。
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