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◆ I'm My Brother's Keeper 兄弟との絆を切々と歌う ジャーメイン・ジャクソン ❹ [ジャーメイン・ジャクソン]

                              オリジナル2009.12,11Upに大幅加筆

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 79年8月、マイケルの『オフ・ザ・ウォール』発表。マイケルは黒人のスーパースターとなります。『OFTW』が売れ続ける中、ジャクソンズとしても80年9月『トライアンフ』を発表。前作『DESTINY』同様、いやそれ以上に兄弟たちが全力で作り上げた作品となります。やはり中心は、ほぼ全曲でリードもとり曲も書いたマイケルでした。
 そして、ジャクソンズはこの強力な二つのアルバムを軸とした“トライアンフ・ツアー″を81年7月より開始します。
そんなトライアンフツアーで全米が熱狂する中、81年9月にジャーメインはモータウンよりアルバム『I Like Your Style』(前作から1年9ヶ月ぶり)を発表します。
 
 前回、"シンガーソングライター"ジャーメインという所を力説しましたが、このアルバムは、なんていうのでしょう、“プロデューサー″ジャーメインという印象をもちます。
 クインシー・ジョーンズは、チーム・クインシーと言われるように、才能あるミュージシャンやライターを結集しアルバムを作り上げる。その中には、まだ売り出し中のような才能もあるわけですが、ほぼクインシーが発掘したミュージシャンたちはその後、一流アーティストまたはグラミー賞でも評価されるようなアルバムに参加する一流ミュージシャンとなる。ジャーメインも負けじと、自身で選び抜いたミュージシャン、アレンジャーを集結させています。
 それらが、ポール・ジャクソンJr(リズム・ギター)、クインシー人脈からは、ジャクソンズの方でも力を発揮したグレッグ・フィリゲインズ(シンセサイザー)、ジュリー・ヘイ(ホーンアレンジのスペシャリスト、グラミー受賞者)が。オウリー・E・ブラウン(ドラムス:後にレイパーカーJrのゴーストバスターズにも参加)。ジョー・サンプル(キーボード)等、素晴らしいミュージシャンで固められている。ジャーメインも、ベース、ドラム、ピアノを演奏。そして全曲Produceです。
 
 後にジャーメインは、85年、アリスタでデビューするスーパーディーヴァ、ホイットニー・ヒューストンのデビューアルバムでも3曲プロデュースし、ホイットニーの大ブレイクに大いにも貢献します。

 アルバムも、10曲中9曲は(共作も含め)ジャーメインが書いた曲。1曲は、親愛なるスティーヴィー・ワンダーのカバー曲(「Signed,Sealed,Delivered I'm Yours 涙を届けて)。
このアルバムからの1stシングルは、②「I’m Just Too Shy」、R&Bで19位。海岸線のドライブをイメージさせるフィーリー風の爽やかな曲。途中ハーモニカ演奏があるのですが、ジャーメイン自身によるものでいい感じ。
 2ndが⑤「Paradise In Your Eyes」、R&Bで60位。イントロが波の音や鳥の鳴き声から始まります。癒し系の1曲。ただシングルとしてはインパクトは弱いかな。
 アルバムから、マイケルや兄弟たちのようなビックヒットは産まれませんでした。しかし他にもシングル候補曲があったと思います。
 アリスタに移籍してホイットニー・ヒューストンとの大人のデュオが注目されましたが、この作品でもリタ・クーリッジとの⑤「Is It Always Gonna Be Like This」アダルトなデュオが収録されています。ソフトな二人の掛け合いに魅了されます。
 ダンス系は、まだ駆け出しの頃ですが、セッションギターリストとして引っ張りだことなる、ポール・ジャクソンJrのリズムギターも光る①「I Gotta Have Ya」などもかなりのシングル向き。(なんでシングルにしないのか不思議)
 そしてスティーヴィーのカヴァー、⑥「涙をとどけて」。前述のジェリー・ヘイのホーンアレンジも冴え渡ります。⑧「I Can't Take No More」もジェリー・ヘイのホーン・アレンジとポール・ジャクソンのリズムギターがうまく絡み気持ちいい。これもシングル向きなんだけどな~。ジャーメイン単独で書いたバラード⑦「Maybe Next Time」のメロディーとボーカルも素晴らしい。
 ⑨It's Still Undoneはアルバムの中でも異色のプログレR&Bでもいうような斬新なリズムアレンジ。このアレンジもジャーメイン単独でしてるというのがその才能の深さを感じます。
 このようにモータウン時代で、一番、ジャーメインのマルチな才能を感じることのできるアルバムのように思います(CD化されていないのが残念)。
そして、注目すべき曲が、エンディングの「My Brother’s Keeper」。映画のエンディングのような美しいストリングスとホーンをバックに感動的なバラードを歌い上げています。クレジットにもあるように、このアルバムは、兄弟たちに捧げられたアルバムでもありました。
 アルバムタイトルが「I Like Your Style」、そしてエンディングをかざるフィルムチックなバラードが「マイ・ブラザーズ・キーパー」です。
ちょっと「オヤっ」て思うことがあります。このアルバムのタイトルは『I Like Your Style』ですが、アルバムの中にこのタイトル曲はありません。で、モータウン時代のジャーメインのアルバムを持っている人はわかると思いますが、次のアルバム『ファンシー』のエンディング曲がこの「アイ・ライク・ユア・スタイル」なのです。
 さらに「マイ・ブラザーズ・キーパー」と「アイ・ライク・ユア・スタイル」はともにジャーメインが書いた曲ですが、共作者も同じエリオット・ウィレンスキー。この時に、兄弟たちへの思いを綴った2曲をエリオットと書き上げたと思われます。当初は、この2曲を収録するプランもあったように思うのですが、全体のバランスも考え、最終的にアルバムに収録に選ばれたのが、マイ・ブラザーズ・キーパー(僕は兄弟たちの守護神)となったように思います。「I Like Your Style」は今作の収録は見送られますが、出来がよかったため次作に収録されたのではないかと思います。それが今作のアルバムタイトルとなった理由だと思います。
 
 ジャーメインは、二つのメッセージをこのアルバムに込めているのです。「I Like Your Style」は、リリック的には愛する女性を賛美するラブソングですが、裏の意味は、ジャクソン兄弟がついに自分たちで作り上げた『Destiny』『Triumph』へのジャーメインからの賛辞だったと思います。モータウンでのソロ活動の道を選んだジャーメインですが、彼らの活躍を見てマイケルや兄弟たちとまた一緒のステージに上がりたいという思いは日ごとに強くなっていったのではと思います。
 「My Brother’s Keeper」のリリックはさらにダイレクトです。

 僕は兄弟たちの守護神
 そして兄弟たちは僕の守護神

 と涙ぐんで歌っています。

 共作者のエリオットは、この後、ジャーメインがアリスタレーベル移籍第1弾アルバム『ダイナマイト』の感動的なエンディング、母親への愛を切々と歌った「Oh マザー」(←ジャーメイン、ここでも泣いてる)や、2弾アルバム『プレシャス・モーメンツ』で、ホイットニー・ヒューストンとのDUO曲、「If You Say My Eyes Are Beautiful」も書いています。シングル化されていたらNo1シングル必須だったと思われるような楽曲です。(マイケルのモータウンでのソロデビュー曲「Got To Be there」も彼の曲だそう。)
 エリオットとジャーメインによるSlowなバラードは素晴らしいです。
 81年、ジャーメインもこのような感動的なメッセージソングを兄弟たちに送りますが、75年、ジャーメインと兄弟たちが決別した時、しばらく溝があったのは事実のようです。
 ニューヨークでファミリーショーを予定していたそうですが、ジャクソンファミリーとモータウンサイドの決裂が決定的となり、モータウン残留を選んだジャーメイン、ショーの直前になってステージに上がることを拒んだというのです。これには他の兄弟たちも大激怒で決定的な亀裂となったようです。そして、その後初めてジャーメイン抜きのステージにあがったマイケルは、「生まれて初めて真っ裸でステージに立ったような気持ちだった」と述べています。
 そこからジャーメインの穴を、ランディと兄弟全員が全力のパフォーマンスでカバーして、新生ジャクソンズとしてのスタイルを完成させていくのです。しばらくジャーメインも、兄弟たちとは一切話をせず、胸の内は母親だけに話していたようです。
 しかし血を分けた兄弟、ずっとデビューから努力してきた仲間たち。時間が、お互いのわだかまりをほぐしていき、ジャーメインも、ここにきてその思いを素直に曲にできたのだと思います。そして、マイケルの「She Is Out Of Life」の泣きに対抗したわけでもないでしょうが、涙を流して歌ったボーカルを収録するのです。 
 兄弟たちと別れ、ソロ活動を選択したジャーメイン。ステージで躍動するマイケルとブラザー達を見て、自分もそのステージに立ちたいと強く願ったに違いない(飛び入り参加はあったみたいですが)。しかしジャーメインがジャクソンズに帰還するには、後3年の月日を要します。 (つづく)

My Brother's Keeperはこのベスト盤に収録されています!
Spectrum Collection

Spectrum Collection

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal UK
  • 発売日: 2007/06/12
  • メディア: CD
 

コメント(2) 
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コメント 2

Jackson

ツイッターから参りました。
私もモータウン時代のジャーメインのアルバムを所有しており、Blog主様が仰るとおりCDでの再発希望しております。
あまりモータウン時代のジャーメインのレビューをネットで見る機会はすくないので奇特と言うより、貴重かと思います。(笑
by Jackson (2018-01-14 23:08) 

amber35

コメありがとうございます。(ほとんどコメントないので気づくの遅くなりすいません)
モータウン時のジャーメインネタでやりとりできてうれしいです!

配信やDLが主流になっているご時世で、CDの再販って時代に逆行している感じですもんね。よほどジャーメイン関係で大きな出来事がないと、あとはモータウンレーベルとしての盛り上がりがあれば、その中で再販されるとかあるかもしれませんね。

またお気軽にコメントくださいませ。
by amber35 (2018-01-28 20:19) 

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