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◆スリラー 25周年記念リミテッド・ジャパニーズ・シングル・コレクション [企画もの、アイテム]

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 前回、『スリラー』がなぜ世界一売れたアルバムとなったのかその要因をとりあげてみました。その要素の一つとして、アルバムからシングルをカットし、さらにミュージックビデオの制作で、曲にさらなる付加価値を持たせる事で、収録アルバムも売れるという方法論がありました。ダウンロード時代の今では考えられないやり方かもしれません。
 逆に、日本ではシングル曲がリリースされた後、それらの曲が収録されたアルバムが出るという『スリラー』とは逆パターンの手法。
 アルバム『スリラー』には9曲収録され、7曲もシングルカットされる事になります。私は7枚目のシングル「スリラー」でリアルタイムにマイケルのシングルに触れることになります。
 
 さて『スリラー25周年記念リミテッド・ジャパニーズ・シングル・コレクション』というのものが2008年3月に日本限定で発売されています。これは『スリラー』からのシングル・カット曲、全7曲をCDにして紙ジャケット仕様で収納したものです。ジャケットはシングルリリース時のレコード盤のジャケットを復刻しており、レーベル面もレコード盤の印刷を復刻している。
 当時のレコード盤のB面に収録されていた曲も入っており、1stシングル、「The Girl Is Mine」のB面「Can't Get Outta the Rain」は、当時初CD化音源となりレアだった。

 80'S好き、当時『スリラー』をリアルタイムに感じていた人には、この1枚1枚のシングル仕様がすべて収録されているというのはたまらないアイテムだと思う。
 あまりこの手の企画ものって好きではないのですが、この『スリラー 25周年記念リミテッド・ジャパニーズ・シングル・コレクション』は最高のアイデア。発売されたのを知ってすぐに購入しました。
 これって日本限定発売なのですかね??そうなると世界的にもレアなアイテムかも。
 私は、次作『BAD』は完全にリアルタイムの1枚1枚のシングルカットの流れを体感し、12inch盤もリアルタイムに購入していきましたが、『スリラー』からのこのシングル群をリアルタイムに購入したという人にまだ出会った事がありません(ネット等でお知り合いになった人の中にはもしかしていらっしゃるのか!?)。

 これまでの記事とかぶる所もありますが、このシングルジャケットを堪能しつつ、シングルカット順に『スリラー』からのヒット曲を振り返ります。
 
 
The Girl Is Mine (82.11リリース:Hot100-2位/R&B-1位)

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 アルバムからの先行シングル。ポール・マッカートニーとのデュオです。
 前作『オフ・ザ・ウォール』で、「ガールフレンド゛」という曲を提供してくれたポール・マッカートニーに対してのお礼の意味もこめてMJから声をかけたそう。
 ビートルズのポールに対して自ら声をかけるなんて、前作の成功でのMJの自信のあらわれだと思う。
 ポールとしても、自分とはジャンルの違うソウルシンガーとの共演に面白みを感じていたようです。  
 ポールは、マイケルとの共演の前に、スティーヴィー・ワンダーとの「エボニー・アンド・アイボリー」(82)も全米1位ヒットになっています。当時、白人の天才ソングライターと黒人の天才ソングライターの共演はかなりの話題となりました。
 ビートルズのポールというビックネームとのデュエットはセンセーショナルだが、その曲ばかりオンエアされ目立ちすぎてしまうという懸念もある。そのため、先行シングルとして早めにカットしたみたい。
 ゴールドは獲りますが、ダリル・ホール&ジョン・オーツの「マンイーター」、メン・アット・ワークの「ダウン・アンダー」に阻まれ1位はとれず。
 マイケルの言うように、この曲のリラックス感の味わい深さは後に感じるのですが、当時は、『スリラー』の中でも地味で飛ばし曲でした。

 08年に発売された『スリラー』25周年記念盤では、will I amがRemixを担当。
 シングル盤には、貴重なMJのデモソロ曲も収録されています。それでこの曲、元々はソロ曲だった事を知ります。
 ぶっちゃけソロバージョンの方がいい。Bridgeの盛り上がりがこの曲のKeyだろうな。この感じがMJらしい。

 この後、今度はポールのアルバムにマイケルが参加。この頃になると、スターのポジションが逆転していた感じ。ポールの『パイプス・オブ・ピース』に収録された「Say Say Say」と「The Man」がある。シングルカットされた「Say Say Say」は両者にとっても最高のシングルセールスとなる。
 『スリラー』に「Say Say Say」が入ってたらとんでもないことになってるな。

 ビートルズのポール・マッカートニーとの共演で、マイケル・ジャクソンを聞かない層もマイケルの存在に注目することになったと思います。ポールとの共演も『スリラー』をクロスオーバーさせた要因の一つだと思う。

Billie Jean (83.1リリース:Hot100-1位/R&B-1位)

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 2ndシングル、実質アルバムの成否をかけた曲だったと思う。
 見事にビルボード゛7週連続1位、グラミーでも「最優秀R&Bソング」、「最優秀R&B歌手」を受賞。
 これいうと周りにヒンシュクかうんだけど、オープニング、かっこよくドラムが鳴り出し、続いてベース。その後、なんか一言入りま す。それが、「チクビッ」に聞こえてしゃーないんだけど。なんて言ってんの?マドンナ のビックヒット「Like a Vergin」のイントロは、「ビリージーン」の影響か。

 当時、クインシーとイントロの長さで意見が衝突したそう。
 クインシー的にはイントロが長いと。しかしマイケルはこの感じが期待をもたせていいんだ。この緊張感あるCoolなイントロはしびれる。
 「ビリージーン」はExtendedバージョン(6:23)があります。アルバム収録は、クインシーに意見におれたけど、Extendedバージョンのイントロこそがマイケルの望んだ形だと思う。
 通常より1分30秒近く長いですが、無理に伸ばしたという感じではなく理想的なExtendedバージョンになっています。これは必聴です。
 今聞いても古くさくない。MJはかなりのめりこんでこの曲を書いたらしい。書いている時から、「こいつはすごいものになる」と予感して。そして、それまでブラックアーティストに対してほとんど閉じられていたMTVの扉が、このビデオクリップによって開かれる。
 さらに、83年5月に放送されたモータウン25周年のステージは伝説の一つとなります。
 この時、あの「ムーンウォーク」も披露される。このパフォーマンスが『スリラー』伝説の最初の加速を生んだ。

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 元々は、黒人層に向けた曲だったみたいですが、予想に反して白人層にも受け入れられる。英国的なTasteも感じる。R&Bの過去と未来が詰まった1曲。

Beat It (83.4リリース:Hot100-1位/R&B-1位)

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 3rdシングルです。「ビリージーン」がまだTop10に留まっているときに、3rdシングルとして「ビートイット」をきってきます。
 通常、チャートの勢いがなくなったころに次の曲を投入するのが常道で、レコード会社も「ビリージーンを殺す気か」ともめたそうですが、MJサイドはおしきります。
 そしてこれが成功。
 見事に相乗効果を生みます。「ビートイット」と「ビリージーン」という神曲が、Radioで流れまくります。黒人、白人、ロックだR&Bだ関係なくリスナーはMJの曲に魅了された。
 MJの曲が、ある意味人種差別の壁をも破った感もある。
 これがまさにMJサイドが狙っていたものだったと思います。常識的に、「ビリージーン」がチャートをおち、普通に「ビートイット」をシングル投入していたらこの現象はおきなかった。
  83年4月16日のチャートでは、「ビリージーン」が1位で「ビートイット」が5位。4月30日には「ビートイット」が1位で「ビリージーン」が5位。これも『スリラー』マジック。

 「ビートイット」もビデオクリップも制作されます。

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 MJにとってもはじめての集団ダンスの作品となります。
 曲だけでも素晴らしいのに、さらにこのロックビートにあわせた見事なDanceが披露されます。
 MJのDanceクリップを見た順番は「スリラー」の方が先でしたが、「ビートイット」も魅了された。
 かっこよかった。
 このかっこよさを超えるものにいまだに出会っていません。そしてMJのDANCEには中毒性がある。何度も何度も見たくなるのです。

 ギターPlayとそのNameバリューでこの曲にかなりの貢献をしたエディー・ヴァン・ヘイレンは、最初電話してきたクインシーのことを本物とは思わずに「失せろ」と言ったというエピソードの真偽の程はわかりませんが、この出会いがどれだけクロスオーバーかがわかるエピソード。
 彼のとてつもないギタ ーソロはきいての通り。ヴァンヘイレンのインパクトが強すぎて陰にかくれていますが、もう一人TOTOのスティーブ・ルカサーも重要なギターPlayを担っています。

 Hot100-1位。さらにR&Bも1位。一見ロックTasteだけど、マイケルの抑えることのできないファンクネスも感じる。
 グラミー最高の名誉「最優秀レコード」と「最優秀ロック歌手」を受賞。
 グラミーで、R&B歌手、ロック歌手、ポップ歌手の3つを制覇したのがすごい事だと思う。MJの中にはものすごいRock Spritsもあるのだと思う。その後、スラッシュ、スティーヴ・スティーヴンスというこれまたすごいギターリストとの共演も周知のとおり。
 「ビートイット」の貴重なデモ・アカペラバージョンが『This Is It』の2枚目のボーナストラックに収録されています。

 MJは、学校に通っている子供たちを心に描いてこの曲を書いたという。そこに込められたメッセージは、暴力は避けるべきというもの。ビデオクリップ゜の中でも、黒人と白人のギャング゛の抗争を描いていますが、MJが「暴力はいけないよ」といって仲裁に入り、みんなで仲良く踊りだす。
 「白人も黒人も関係ないんだ」と。それは後の「Black Or White」にもつながっていくように思います。

Wanna Be Startin' Somethin '(83.5リリース:Hot100-5位/R&B-5位)
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 アルバムのトップを飾るこの曲は、前作『オフ・ザ・ウォール』の頃にすでにMJの手によって書かれていたそうです。 詩の中にVegetable(野菜)というキーワードがでてきます。そこに飽く事を知らぬ大衆に食い尽くされる有名人としての自分を重ねています。
 この曲もMJの匂いを感じる曲。
 打ち込み部分と生楽器の融合の絶妙で最高のグルーブもうむ。
 MJグルーブが全開。ライブでも、オープニングはこの曲ではじまることが多かった。
 グラミーでも最優秀R&Bソングにノミネート(受賞は「ビリージーン」なんですが)。

 25周年記念版には、エイコンによってNew「スターティン・サムシン」が制作されます。MJのVocalも新録と思われます。
 『This Is It』2枚目のボーナストラックに、デモバージョンが収録されています。まだラフなTrackですが、逆にMJの生のGrooveを感じれていい。

Human Nature (83.7リリース:Hot100-7位/R&B‐27位)

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 TOTOのメンバーが書いた曲。シンセサイザーの効果がすごくでた曲ではないだろうか。TOTOの力量にもうならされる。でもけっして機械的でない暖かさがでている。
 サウンド的に『スリラー』でTOTO勢の果たした功績は相当なもの。『スリラー』は当時最高のミュージシャンとテクノロジーを融合させた傑作アルバムとも言える。

 この曲は、Alternate7 Editという、シンセの音や、MJのVocalが微妙に違うバージョンもあります。後に、Teddy RileyのRe-Mixで女性ボーカルグループSWVの「Right Here」で絶妙なサンプリングもされ(ファレル・ウィリアムスも絡む)、オリジナル以上の大ヒットもします。

P.Y.T (83.10リリース:Hot100‐10位/R&B‐46位)

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 アルバムからの6番目のシングルになります。当初、レコード会社的にはシングルカットは前回の「Human Nature」で終了する方針だったそうです。しかしマイケル・ジャクソンの勢いはおちない。 
 『スリラー』は、この時点でUSAだけでも1,000万枚を超えます。
 ライナーノーツで知りましたが、当初「スリラー」のビデオクリップのプランはなかった感じ。
 『スリラー』は売れ続け、音楽と映像とダンスを見事に融合させて「ビリージーン」「ビートイット」の予想をこえた反響と効果を感じ、この頃、「スリラー」の製作が始まった模様。

 「PYT」は超軽快なポップソング。バックボーカルにまだ初々しいジャネットジャクソンも参加。MJのヴォーカルの強みはこういうポップソングが歌えるという事。黒人ボーカル独特の黒さというか、粘っこさがないから、さわやかに聞ける。ちょっと軽やかなシャウト気味な感じがいい。まさに七変化といったところ。
 PYTの前段階のデモバージョンもUltimateなどで発表されましたが、やっぱアルバム収録の方がいい。グラミーでは、これまた最優秀R&Bソングでノミネート。

 さすがに、この頃になると、シングルの勢いもなくなってくる。そりゃ、みんなアルバムを買うから、わざわざシングルの購入しないよ。でもTop10に入ってよかった。

Thriller (84.2リリース:Hot100-4位/R&B-3位)

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 84年、この「スリラー」が登場したことでこの年もMJの勢いは続くことになります。83年、84年、2年連続年間アルバムチャートで1位。アルバムからの最終カットです。

 「スリラー」、元は「スターライト」というタイトルでした。
 デモバージョン流出してました。「スリラー♪」のとこが「スターライト♪」になっています。全体のリリックも全然違います。たしかにちょっと宇宙的な雰囲気のするサウンドです。だから月夜のスリラーナイトのイメージにもフィットした。MJっぽい匂いもしましたが、ロッド・テンパートンの曲です。

 何度見た事でしょう。当時はビデオを擦り切れるくらい見ました。美術やセット、衣装、メイクも惜しみなく費用をかけ細部にまでこだわったから今見てもそんなにちゃちく見えない。

 以上がシングルカットされた7曲。
 あとアルバムからシングルカットされていない2曲が「Baby Be Mine」と「The Lady In My Life」。この2曲もクインシーのブレイン、ロッド・テンパートンの曲です。かなり大人の楽曲です。
 さらにロッドの曲は、MJのVocalの素晴らしさが引き出される。

 「Baby Be Mine」は、最初の頃は他の曲と比べても地味で、「ガール・イズ゛・マイン」とともに、あまり聞いてなかっ た曲。でも10年後には、一番聞いた曲かも。このミディアムGrooveとMJのVocalが素晴らしい。MJのボーカルののび、ボーカルの素晴らしさをあらためて実感した曲。
 「Lady In My Life」は、完成に手間取った曲の1つらしい。
 完璧なヴォーカルを録るために、何度も繰り返すが、クインシーからOKがでない。最後、スタジオを真っ暗にしてクインシーが要求する様に"乞う"よう に歌い、素晴らしい仕上がりとなる。この曲は、夜真っ暗にして部屋できくのがいい。この曲の詩もいい。
 MJのヴ ォーカルの素晴らしさを堪能しよう。MJにはもっとラブバラッド゛を歌って欲しい。この声は素晴らしすぎる。 

 
 以上シングルカットの流れを振り返りました。アルバムで聞くのではなく、このシングル群を1枚1枚プレイヤーに入れて聞くのも粋だよね。 
スリラー 25周年記念リミテッド・ジャパニーズ・シングル・コレクション

スリラー 25周年記念リミテッド・ジャパニーズ・シングル・コレクション

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ(SME)(M)
  • 発売日: 2008/03/26
  • メディア: CD

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コメント 2

めふぃ

いやぁ、いつも楽しく見ています!
一緒にマイケルの歴史をおっているようでたのしですw
invincibleをどの様に聞いて感じられたのかレビューで知りたいです。
個人的にmjの進化に驚いた作品なので
by めふぃ (2020-01-14 23:15) 

amber35

お~うれしいお言葉です。
そうなんです、自分自身でもあらためてマイケルを振り返りながら記事をかいている所があります。

『Invincible』に対してもいろいろな思いをもっています。
なかなかSlowペースなので、そこにたどり着くまで時間はかかると思いますが・・・すいません。。

ざっと書くと『インビ』はロドニー・ジャーキンスの仕事ぶりがさえわたっていたと思います。R.ケリーの「Cry」も素晴らしかったし。個人的にはTeddyの曲は『Dangerous』時のインパクトはなかったです。アウトテイクもちょこちょこ流出していますが、そのクオリティーの高さと、関わったプロデューサーの多さも驚きました。ただ時間をかけすぎた印象はあります。旬な音も、若干時代遅れ的な感じにもなった感。詳細はまたUpできればと思います。
by amber35 (2020-01-19 11:48) 

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