ORIGINAL 2013.12.14 Up

 
 1986年、ジャーメイン・ジャクソンのアリスタレコードでの2枚目のアルバム『プレシャス・モーメンツ』の紹介です。個人的には、モータウンでのヒット作『Let's Get Serious』(80)、アリスタ移籍第1弾アルバム、R&Bアルバムチャートでも1位にもなった『Jermaine Jackson』(邦題『ダイナマイト』84)、LA&BABYFACEの全面バックアップの『You Said』(91)よりも大好きなアルバムです。
 世の中的にはあまりPick Upされませんが、めちゃいいアルバムだと思ってる。完成度も相当なもの。アルバムジャケもかっこいい。当時はレコードで買いましたが、このジャケットにもしびれまくった。
 
 ジャーメインは、マイケルと並びジャクソン・ファイヴの顔でした。そんな彼が、Epicへ移籍した兄弟と離れ一人モータウンでソロ活動をし(その経緯は過去記事を参照ください)、スティーヴィー・ワンダーの力も借り製作した『Let's Get Serious』というヒット作も生みます。シングル「Let's Get Seriou」は、1980年のビルボードR&B部門の年間No1シングルにもなっています(マイケルの『Off The Wall』が年間No1・R&Bアルバムになっている)。
 モータウンで、『Jermaine』(80)、『I Like Your Style』(81)、『Fancy』(82)と質の高いアルバムを制作しますが、『Let's Get Serious』を超えるようなヒットを出す事はできませんでした。その一方で、弟のマイケルは前人未到の成功を収めていくのです。モータウンでのプロダクションもある程度の限界が見え、ベリー・ゴーディーとも納得の上、クライブ・デイヴィス率いるアリスタへ移籍することになります。アリスタはAOR色の強い大人のレーベル。所属アーティストは、アレサ・フランクリン、ケニーG、バニー・マウロウ、サンタナ等。デビュー前のホイットニー・ヒューストンも控えていました。ジャーメインのカラーにあったレーベルだと思います。
 そして、迎え入れたクライブ・デイヴィスがかなり力を入れ、1984年のジャーメインの移籍第一弾アルバムを売り出します(通算11枚目)。




ダイナマイト



  • アーティスト: ジャーメイン・ジャクソン

  • 出版社/メーカー: SOLID / FUNKY TOWN GROOVE

  • 発売日: 2013/01/30

  • メディア: CD





 タイトル曲、ダンサンブルな「ダイナマイト」、ジャーメインの魅力が全開の「Do What Do You」等のシングルヒットも生みます。レコード会社の関係でマイケルとのDUO「Tell Me I'm Not Dreamin'」はシングル化できない状況になりましたが、アルバムセールスには貢献した。さらにホイットニー・ヒューストンとDUO「Take Good Care Of Me Heart」も収録。(この後、ホイットニーのデビューアルバムにも重複収録されるけど)世紀のスーパースター、ホイットニーとマイケルの2人と共演した曲が収録されているアルバムはこれだけです。

 ジャーメインは、素晴らしいボーカリストというだけでなく、曲も書け、楽器もでき、プロデュースもできる、実はかなりマルチなアーティストですが、移籍最初のアルバム『Jermaine』は、クライブのプロダクションに身を委ねます。そして86年のこの『プレシャス・モーメンツ』では、近年溜まっていたジャーメインの創作意欲が爆発している感じです。クライブも、ジャーメインに今回は自分の好きなようにやってみろって感じですべてをジャーメインに任せた印象も受けます。
 ジャーメインは、ボーカリストとしても相当魅力的ですが、ライターとしてもかなりいい。このアルバムでも10曲中、6曲に参加しています。SOUNDの肉づけには、以前紹介した信頼するグラミーでも常連のマイケル・オマーティアンが力を貸しています。
 オマーティアンの魅力は、そのシンセ・アレンジにあると思う。ジャーメインのこのアルバムでは、ドラムプログラミングも含め、オマーティアンのテクノロジーセンスが全開。それがジャーメインの大人のかっこよさをうまく引き出している。『ダイナマイト』は、ちょっとマイケルと張り合うサウンドスタイルも感じましたが、今作はジャーメインの方向性が見事に定まっています。そのスタイルを確立させたオマーティアンのサウンドプロダクションは見事です。