MJの虜、しいてはブラックミュージックに傾倒していく事になったすべてのはじまりが、この「スリラー」のミュージックビデオだったといっていい運命的かつ衝撃的な出会いでした。従兄弟の兄に「おもしろいビデオ」を見せてやると言われ、Hビデオかと思って期待していたら、ある意味それ以上のインパクトでした。
私だけでないでしょう。どれだけ多くの人が衝撃を受け、引き込まれたことか。以前のベストヒットUSAでのMJ特集での視聴者ランキングでもこの作品が1位になっていました。「親が子供に見せたい」っていうのもわかる、世代を超えて楽しめる最高のエンターテイメント作品。アメリカ議会図書館にフィルムが永久保存される「アメリカ国立フィルム登録簿(National Film Registry)」にもミュージックビデオ的な「スリラー」が加わるという。
ゾンビと一緒に踊るというのも今にして思えばかなりの斬新さ。これを超える作品は、33年経た2017年7月現在でもない。今後この作品のインパクトを超えるものは出るのでしょうか?
まずマイケルのようなあのカリスマ的なビジュアルをもった人間がでないといけない。MJ以降のR&Bのスター、アッシャーやクリス・ブラウンにしても踊れるけど、ビジュアルはかなり落ちる。
そしてダンス、ダンスはほんと必死で努力すれば、ある程度の形にはなると思う。マイケルの場合、抜群のセンスがある上、さらに超人的な努力をするわけだからすごい。バックダンサーも、相当のレベルの人が選ばれていると思うけど、本業がダンサーでないMJがやはり一番輝いているという。
そして仕上げにあのボーカルなのです。この歌声も実は欠かせない要素です。このヴィジュアル、Dance、ボーカルが絶妙に融合する。この3要素を兼ね備えた人間はそうそういるものではない。
そしてさらにもうひとつ付け加えるとしたら、エンターテイメント能力とでもいうのだろうか。「スリラー」の基本的なコンセプトはマイケルによるもの。恋人が狼男になったり、ゾンビが踊ったりと。こういうアイデアって頭の固くなったおっさんには出てこない感じ。「ゾンビが踊る???ばかばかしい」とか言って一蹴しそう。
しかし、マイケルのピュアな心からうまれるアイデアはシンプルに我々の心を動かす。(それをいうと映画「ムーンウォーカー」もMJの美学がいっぱい。イタリアンマフィア的なMJがロボットに変身し、悪者をやっつけるなんていたってシンプル!あれはちょっと外したけど・・・)
「スリラー」の制作費は80万ドル(約2億円)。これはMJの採算を度外視したアーティスティックな感覚で製作された側面もあると思います。結果的には、この製作過程もドキュメント風にして『Making Of Thriller』もとして作り上げ、それが大ヒットし、100万本売れるというメガヒットとなり、こちらも最も売れた音楽ビデオになってしまう。
スリラー [VHS]
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 1988/12/14
- メディア: VHS
制作費を補填するどころかバカ売れ。ただマイケルはお金に執着するという印象はうけません。妥協を許さないマイケルの姿勢が結果的に費用がかかってしまうという感じ。この辺の金銭感覚が(真偽のほどはわかりませんが)後に言われている金銭的な困窮等という事をもたらしたのかもしれません。
さらにこの作品のオカルト的な要素が、当時マイケルが信仰していた宗教団体から非難をうけます。子供にも悪影響を与えるのではないかという事で、専門家による調査もされるのですが、その結果が興味深い。子供は怖がるのだけど、「また見たい」と思うようになるのです。“病みつき″にさせるのです。
これは確かに私も感じます。何度この作品を見た事でしょう。まーたいていのミュージックビデオは数回見たら飽きてしまう。ここまで中毒的な症状をさせる映像もそうないと思います。そこも「スリラー」の凄さ。さてスリラーをこれだけ見まくってると、いろいろ気づく事などもあるわけで、今回はそんなとこを記したいと思います。
映画を見終わって2人が夜のストリートを歩くシーンです。このシーンのディスコ調のビート大好き!「マイケルめっちゃ手長いなー」等と思いもしたり。(エヴァっぽい感じもあり)で、右下に光の輪がみえるんですが、これぜったい機材の光。平行移動してしばらく続きます。ほんとは写っちゃいけないもんだと思うんですが。編集のときも気づかなかったのかな~。
で、ゾンビになって踊るわけですが、けっこう顔怖いですよね。バックダンサーも相当な人たちなんでしょうが、「おれスリラーで踊ってんだ」っていわれてもわかんないですよね~。でもここで踊った人は最高の名誉ですよね。
学園祭で踊るかって奴もいましたが、できてるのここだけ。
で元のMJにもどって歌って踊るのがめっちゃかっこいい。めちゃくちゃしびれました。当時、女性アイドルよりある意味マイコーにときめいてました。おれ、ゲイではないですが、なんなんでしょうこの感覚は。
でダンスはしびれまくりなんですが。MJとダンサーが伸び上がるこのシーン、伸び上がってからもどるとこの音楽とのタイミングが微妙にずれてるのが、唯一ちょっとしっくりきまへん。このミュージックビデオの既成概念を打ち壊した「スリラー」はショート・フィルムと呼ばれるようにもなります。
最新の映像とステージを融合させる演出だった『This Is It』ツアーでも新たな映像が3Dとして制作された。新たな演出の「スリラー」を非日常の夢のような舞台で見たかったですね。
「スリラー」最高です。マイケル・ジャクソン最高です。
その後の私の生活をHappyにしてくれました。マイケル・ジャクソンと出会ったから、今の音楽好きがあるんです。
シングル「スリラー」は『スリラー』からの7枚目のシングルとなり、HOT-100でも4位。シングルセールスでもミリオンというのがすごい。アルバムからの7枚のシングルがすべてトップ10に入るという偉業をなしとげるのです。
「ビリージーン」「ビートイット」という神曲だけでもすごいのに、最後にこの「スリラー」(ロッド・テンパートン作)ですからね。さて『スリラー』ブームが終わり、人々は次のマイケルのアルバムをマイケルのダンスビデオを首を長くして待つのです。
追記(07.07.04)
今年の夏、SF『スリラー』が3D化されるって。マイケルの3D Danceはディズニーアトラクション『キャプテンEO』で体感したけど、確実にダンスの迫力が違うので驚いた。楽しみ~。